スマホ金融は「何でも安いドンキ」戦略へ

 よそと手を組む方針とは裏腹に、携帯キャリア系の証券会社では自社グループ力を打ち出す戦略が目立つ。

 まず、"安さ"と"おトクさ"を前面に押し出しているのが au フィナンシャルグループ。安さで目立つのは、住宅ローン金利の優遇だ。引き下げ幅はau回線(povo2.0、UQ mobileは対象外)とのセット契約で年0.07%、「じぶんでんき」とのセット契約で年0.03%、J:COM NET(一戸建てが対象)とのセット契約で年0.03%、J:COM TV(一戸建てが対象)とのセット契約で年0.02%など、すべて契約すれば基準金利から年0.15%も低くなる。※諸条件あり

 この優遇割をすべて適用すると、10月現在の住宅ローン全期間変動プランの金利は年0.169%と破格の数字だ。

 加えて、預金金利でもおトクさを打ち出す。auじぶん銀行とauカブコム証券の資金移動をスムーズにする自動入出金サービス「auマネーコネクト」を設定すれば、円普通預金金利が年0.10%になる。そのほかにも、auじぶん銀行をau PAYと口座連携、au PAY カードの引き落とし口座に設定することで、さらに年0.10%上乗せに。ここまでで普通預金金利は年0.20%までアップする。

 これに加えて、携帯プランである「au マネ活プラン」(月額6580円/月。税抜き)を契約し、さらにau PAY ゴールドカードを保有してカード代金の引落とし口座にすれば、全部ひっくるめれば年0.30%まで上がるのだ(金利は税引き前)。もちろん、「au マネ活プラン」にはカード積立の還元率が3%に上がるNISA特典(au PAY ゴールドカードの場合。12か月限定、その後は2%)もあるので、抜かりはない。

 年0.1%台という劇的に低い住宅ローン金利は、オトクに敏感な若者層に刺さるだろう。auの通信と金融サービスとを使えば使うほど、住宅ローン金利が安くなったり、預金金利が高くなったりと、「auはいろいろオトクそうだ」と感じさせる。ディスカウントショップ「ドン・キホーテ」のように、ここに行けば安いものがありそうだと思わせる、「金融ドンキ戦略」と呼ぶのはどうだろう。

 細かく検証すると、住宅ローンや預金金利の優遇を受け続けるためにはキャリア契約を続ける必要があるし、「au マネ活プラン」では通信料金や、au PAY ゴールドカードの年会費1万1000円などのコストもかかる。利用者は、払うコストと還元されるメリットを冷静に比較する必要があるのは言うまでもない。「安そう」という感覚だけで思考停止してはいけない。