「ゲーム条例の付則に、施行2年を目途とした、いわゆる見直し条項があるにもかかわらず、今なおまったくその動きは見られません。国に先駆けてネット・ゲーム依存への対策をするという旗を掲げたにもかかわらず、条例施行後、新しい取り組みをしたり、その成果を発信して他の自治体に広げていったりという機運もまるでない。『作ったら作りっぱなし』という姿勢に、何のための条例なの?と感じざるを得ません。そうした怒りから、今回の書籍の執筆にも至りました」

 件のゲーム条例は「子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)」などという文言があるが、あくまでそれは親の努力義務という立て付けだ。罰則もないため、住民にとっても今や過去の産物になりつつある。

「県民に聞いても『ああ、そういえばそんな条例がありましたね』という反応なんです。議員たちも『もう触れるな』という空気です。各所から批判があり、不透明な過程があったにもかかわらず、何の説明もなく、作ったらそれで終わり。条例の価値をおとしめた条例だと思います。それでも条例に基づいた依存対策として年間約1000万円の予算が投じられ、我々の税金が使われ続けています」

「県民が舐められている」
香川県議会の高額視察費用

 ちなみに、香川県議会によるこうした不透明な行いはゲーム条例以外にもある。今年11月に予定している知事と議員らの海外訪問において、議員1人当たりの費用が約263万円だという計画を発表。その高額さに市民団体や一部議員から批判の声が上がり、宿泊先ホテルのグレードを下げるなどして3割ほど減額することになった。議員の死去や辞退で参加は当初計画の半数の4人になったが、それでも知事や随行職員を含めた9人の派遣費用は1000万円を超える見込みだ。

「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?瀬戸内海放送の山下洋平記者の著者『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』(河出書房新社)

「香川県議会は2017年に行った欧州視察で、昼間からビールで乾杯する様子などを報じられています。裁判所はこの視察を「実質的には観光」と指摘し、旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決が出たばかり。にもかかわらず、今回また高額な海外派遣費用が問題になっている。選挙で選ばれているとはいえ、県民が舐められているとしか思えません。そして、これはなにも香川県だけの問題ではなく、全国、そして国会においても同様だと思います」

 しかし、メディア側にも為政者の傲慢(ごうまん)さを招いた要因があると山下氏は語る。