つまらなくなった
文芸雑誌
芥川賞受賞作が読まれないのは、単純に言えばおもしろくないからだ。これだけ話題性があり、コマーシャル力も十分な環境で、販売が低迷する原因はそれしかない。別の言い方をすれば、100万部を超えるベストセラーになるのは、話題性とコマーシャルの要素が大きいともいえる。
ただし、芥川賞は公募ではなく、述べてきたように5つの雑誌掲載作から選ばれた候補から決まるのだから、それがおもしろくなければ、いくら選考しても結果は知れている。
雑誌掲載作は、主に新人賞を受賞した作家の小説である。例外としてテレビなど他分野の著名人が依頼されて書くこともあるが、ほとんどが新人賞作家で、芥川賞作家はその中から出てくる。
つまり、芥川賞の問題点とは、言い換えればその母体となる雑誌の問題点であり、そのまま新人賞の選考に当てはまるのである。
筆者の元には毎月これらの雑誌のいくつかが送られてくるが、この10年くらいで大きく変わったことがある。それは率直に言って雑誌がおもしろくなくなったことである。
載っている小説は初めの数ページか数行で読む気がなくなるし、特集や対談や連載も読み飛ばしている。特集や対談はそもそも小説や文学と関わりの薄いテーマが多くなっている。特にひどいのは連載小説で、これはほとんどが芥川賞を受賞した作家が書いている。辛うじて読めるのは一部のエッセー・コラム類と評論文くらい。といっても、エッセー・コラム類は単に短いから読めるだけのことなのだが。