積まれた本写真はイメージです Photo:PIXTA

歴史も話題性もある日本でもっとも有名な文学賞といえば、毎回同時に発表される直木賞・芥川賞だろう。直木賞は主にエンターテインメント系の中堅作家を対象とし、芥川賞は純文学系の新人作家を対象とする。しかし、芥川賞は特に若い世代には人気がなくあまり読まれないという。なぜなのか。芥川賞候補の経験がある現役作家が、その理由や問題点について語る。(作家・ライター 神納まお【ライターネーム】)

芥川賞を受賞しても
料理本程度の実売部数

 この数年では、宇佐見りん『推し、燃ゆ』が50万部を超えたことを除けば、ほとんどの芥川賞受賞作の実売は4万~5万部。料理本やダイエット本などの実用書ならすぐに達成してしまう部数だ。

 又吉直樹が受賞して200万部を超えたのは2015年、これ以外で100万部を達成したのは2004年の綿矢りさまでさかのぼる。10万部を超えれば大成功なのである。

 ちなみに4万~5万部の販売部数だと、賞金や関連エッセー、講演や受賞第一作の原稿料まで含めても、作家の収入は1000万円に届かない。