高額療養費は申請しないと
取り戻せないケースもある

●ケース1
 同じ月に、家族の医療費も高額になった
 ⇒ 世帯合算の手続きを忘れずに!

 高額療養費は、1人の人が、1カ月に、1つの医療機関に支払った自己負担額の合計が上限額を超えると適用される。さらに、同じ月に、同一の健康保険に加入する家族の医療費が高額になると、「世帯合算」といって、家族の自己負担分もまとめて申請できる。

 ただし、その患者の家族も医療費がたくさんかかったかどうかは、病院や診療所では判断できない。そのため、世帯合算をするためには、自ら申請する必要がある。この申請を忘れると、せっかく取り戻せるお金を損してしまう可能性があるのだ。

 たとえば、月収45万円のAさん(50歳・会社員)のケースで考えてみよう。Aさんの妻はパート労働者で、Aさんの健康保険の扶養家族になっている。

 Aさん夫婦は、同じ月に病気になり、それぞれ医療費が50万円ずつかかった。Aさんの高額療養費の自己負担限度額は、【図1の(ウ)】なので、病院の窓口では限度額適用認定証を提示して、8万2430円ずつ自己負担している。夫婦が支払った自己負担分の合計は、16万4860円だ。

 だが、同じ健康保険に加入している家族の医療費は、世帯合算して高額療養費の適用を受けられる。そのため、Aさん夫婦の本来の高額療養費の限度額は、【8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円】だ。

 健康保険組合に世帯合算の申請をすると、窓口で自己負担したお金の合計16万4860円から、高額療養費の限度額8万7430円を差し引いた7万7430円が還付されるのだ。反対に、還付申請しなければ、約8万円ものお金をみすみす損してしまうことになる。

 70歳未満の人は、医療費の自己負担額が2万1000円を超えると世帯合算ができる。1人分の医療費では自己負担限度額まで届かなくても、世帯合算すれば高額療養費の適用を受けられることもあるので、同じ月に医療費が高額になった家族が複数いる場合は、忘れずに世帯合算の申請をするようにしたい。