杭州東駅の待合ホールで待つ大勢の乗客。中秋節と国慶節ゴールデンウィークの最終日、杭州東駅は連休の帰省客のピークを迎えた杭州東駅の待合ホールで待つ大勢の乗客。中秋節と国慶節ゴールデンウィークの最終日、杭州東駅は連休の帰省客のピークを迎えた Photo:NurPhoto/gettyimages

日本には春にゴールデンウイークがあるが、中国には9月末から10月頭にかけて「黄金週」がある。行動制限が解けた大型連休となれば、旅行に行きたいと思うのは当然。しかし今年の黄金週は、コロナ前のそれとは大分様子が違ったという。なぜか日本メディアを非難し始めた「環球時報」や「北京日報」、そして日本にやってきた中国人観光客の「見えない旅」とは……。(フリーランスライター ふるまいよしこ)

中国版“秋のゴールデンウイーク”
2023年は旅行した人が多かったが、コロナ前との違いが……

 ちょっと前の話になるが、今年の中国国慶節(建国記念日、今年は10月1日)は土、日を挟んで中秋節(中秋の名月)と連なったため、多くの人が9月29日から10月6日までの8連休という豪華版となった。加えて自身が会社の経営者だったり、潤沢な有給休暇が取れたりする人の中には、10連休や15連休にしてしまった人もいたらしい。

 最低でも8連休となると、連休の過ごし方が「旅行でしょ!」となるのは、どこの国でも同じである。特にコロナの行動制限から解放されて初めての秋の連休だし、8日間丸々の旅行は難しくても気候的にも爽やかなこの時期に、「ちょっと出かけてみようか」となるのは至極当然。おかげで中国政府の統計によると、この「黄金週」(ゴールデンウイーク)に国内旅行に出かけた人の数は延べ8.26億人と、コロナ前の2019年よりも4.1%増大した。

 ただし、観光関連売り上げの伸びは2019年同期比でわずか1.5%増と、観光客の延べ人数が増えた割には大きな増収には至らなかった。

 その原因の一つは、旅行といっても短距離や短期間だった人が多かったから。コロナ前までは「黄金週」といえば、大渋滞、大混雑で、「風景を見に出かけたのに目に入るのは人の波」とか、「ぼったくりなどに遭って、ヘトヘトになった」という話がよく流れていた。だが人々は3年間の「自宅待機」を経て、そんな旅を反省したらしい。今年は年初めから、「勢いに任せた、盛りだくさんの旅をしなくなった」とあちこちから報告されていた。

 同時に、人々が旅の予算をきちんと組み始めたことも消費額に直接影響したようだ。今回の連休旅行の特徴として、これまでのように懐具合に任せて大盤振る舞いを楽しむ旅ではなく、コストを抑えてつつましく旅を味わう人が増えたことが挙げられる。

 旅先では安価な民泊が人気となった。その一方で、高級ホテルも人気だったが、その宿泊スタイルは連泊して観光地を回るのではなく、ホテル内の施設やレストランを利用し、SNS映えする写真を撮って楽しむ、そんな「体験的宿泊」が目立ったという。

 連休後半には旅行ムードが勢いを失い始めて、国内航空券の値下がりが始まり、ホテルや民泊は宿泊率を上げるために価格を引き下げるという手段を取ったところもあった。これまでのように、「連休だから当然高い」とか、「繁忙期は売り手優先」という感じではなくなってしまったのである。