SNSに書くと非難される!
訪日した中国人観光客たちの「見えない日本旅行」
こんなムードの最中に、実際に日本を旅していた中国人観光客たちはどんなふうに過ごしていたのだろう?
それについて、山東省の中国共産党済南市委員会機関紙傘下の「経済観察報」が「見えない日本旅行」というタイトルで伝えていた。
記事によると、団体旅行キャンセル続出で日本行き航空券が安くなったことが、すでにビザを持っている個人旅行客の背中を押したらしい。9月に入ると、深センから日本行きの航空券は約2000元(約4万円)まで下落したというから、通常時のディスカウント航空券並みの価格である。
さらに京都などの人気観光地はさすがに人出が多かったものの、「以前はどこにいっても中国人観光客だらけだった」のが、今年は中国語よりも韓国語をよく耳にしたとも紹介されていた。また、日頃から訪日者の空港出迎えアルバイトをしている中国人留学生も、国慶節連休中は大忙しだったと証言している。
一方で、そんな観光客たちも国内のムードをおもんぱかり、「(広範な人の目に触れる)SNSのタイムラインには日本での見聞を流さないようにした」と述べている。実際に自分の旅ブログに東京の旅について書き込んだブロガーが、激しい非難コメントにさらされるケースも起きており、彼らはあえて「見えない旅」を楽しんだようである。
SNS全盛時代、自分の楽しい旅の様子をSNSにアップできないのはちょっと残念だが、コロナ以降、すでに多くの人たちが「流せない話題」にすっかり慣れきっている。あえて喧伝(けんでん)しないことで、静かで誰にも知られない旅をじっくり楽しむことができる。そんな「二重生活」あるいは「二枚舌生活」は、中国で生きるためのすべになってしまった。
反日キャンペーンの中で日本旅行を選んだ人たちの中には、リピーターも多くいたという。そんな彼らが次回は堂々とまた遊びに来られるよう、期待したいものである。