米コロンビア大学のナイドゥ教授らの研究は、この改革が外国人労働者の賃金を10%上昇させ、同一雇用主での契約継続の割合を上昇させたことを示している。現在の雇用主が、転職を防ごうと待遇を改善して引き留めるようになったためだと解釈されている。

 一方で、新たな外国人労働者の受け入れは減少したという。これは雇用主にとって外国人労働者を受け入れることのメリットが減少したためだと解釈されている。

 アラブ首長国連邦の経験が示すように、転職のオプションを労働者が持つことは、彼らの交渉力を向上させ、結果として処遇改善につながる。そのため、今回の提案の中で定められている同一分野内での転職を認めるという条件が、過度に転職の機会を狭めることがないように配慮が必要だ。

 技能実習制度と、より長期の滞在を可能とする特定技能制度との接続改善が提案されるなど、たたき台には評価すべき点が多い。今後の人口減少を見据えると、外国人労働者を長期的な視点で受け入れていくことは必須であり、最終報告書がこの目標と整合的な形でまとめられることを期待したい。

(東京大学公共政策大学院 教授 川口大司)