昨年1月、カザフスタン全土に騒乱が広がった際、ロシア空挺(くうてい)部隊が秩序回復のためにさっと舞い降りた。ロシア人が「近い外国」と呼ぶ旧ソ連圏諸国の多くに対し、ロシア政府の支配力はピークにあるように思われた。だが翌月に始まったウクライナへの侵攻は、ロシアが「裏庭」と見なしていた地域を掌握する同国の力の限界をあらわにした。近隣諸国や同盟国は、ウクライナで繰り広げられる殺りくや国際社会の対ロシア制裁に動揺し、外交関係の多様化を急いでいる。中国や西側諸国との関係を深めることで、ロシアに依存するリスクにヘッジをかける狙いがある。「(ウクライナでの)戦争によってロシアへの恐怖が増大した。ロシアの政策はかつてわれわれが慣れていたものよりはるかに不安定で、国境を認めるという原則が崩壊していることが判明した」。カザフスタンの政治学者で、米ハーバード大学ロシア・ユーラシア研究センターのシニアフェローであるナルギス・カセノバ氏はそう話す。「一方では、恐怖ゆえに彼らを受け入れようとするかもしれない。だが他方では、その恐怖のために他の誰かに頼りたい、保護をしてくれる誰かを見つけたいと思うようになる」
ロシア「裏庭」で求心力低下、関係多角化探る国々
ロシア主導の軍事・経済同盟メンバーが中国や西側に接近
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