司法省への激しい攻撃は
自らの捜査逃れが目的か
ニューヨーク大学の歴史学教授で独裁政治を研究しているルース・ベン・ギアット氏は、この計画を準備しているトランプ氏の側近たちが使う表現に懸念を示している。
トランプ政権1期目で行政管理予算局長を務めたラッセル・ボート氏はニューヨーク・タイムズ紙に、「我々がやろうとしているのは隠れた独立の塊を見極め、それを取り押さえることだ」と語ったが、ギアット教授によれば、それは独裁体制下においてよく使われる表現だという。
ギアット教授はこう説明した。
「新たな政権発足に合わせて公務員を一新する。自分に忠実でない人たちを粛清する。求められるのは専門知識ではなく、忠誠心です。自分の命令通りに動く人間で政府内を固め、そうやって大統領権限を集中させ、強化させていくのです」
その上でギアット教授は、「“隠れた独立の塊を探して取り押さえる”というのは、民主主義の基盤である行政府や行政機関の独立性を否定するものです。“取り押さえる”という表現も民主的な改革とは相いれません。権威主義的なものです」(PBSニュースアワー、2023年7月19日)と警鐘を鳴らした。
トランプ氏は以前から、「“ディープステート(闇の政府)”を一掃する。社会主義者や主戦主義者、司法制度を武器として利用する官僚を見つけ出し、彼らを連邦政府のビルから、そして政府から徹底的に追放する」と繰り返し述べているが、2期目にはそれを徹底して行うつもりなのだろう。
それからトランプ氏は自分を起訴した司法省を目の敵にして激しく攻撃しているが、その本当の狙いは司法省の独立性を奪い、気に入らない官僚や検察官を追放し、自分に捜査が及ばないようにすることではないかと思われる。
つまりトランプ氏は自身の法的問題を逃れるために「ディープステート説」を利用しているともいえるが、このような手法はロシアのプーチン大統領もしかり、権威主義的な政治家の常とう手段である。