政権獲得後に向けて進む
「独裁体制」への準備
2024年大統領選の共和党予備選が始まるまで約2カ月半に迫った10月28日、主要候補の1人のペンス前副大統領が選挙戦から撤退すると表明した。ペンス氏は2020年大統領選の結果を覆そうとしたトランプ前大統領の命令に従わず、当時副大統領としてバイデン氏の勝利を認定したことで、トランプ氏とその支持者たちを激しく怒らせた。
しかし、ペンス氏は「私は憲法に従った。米国の民主主義を守るために正しいことをした」と主張して大統領選に立候補し、そのことを有権者に訴えると同時に、トランプ氏に従うことへの警告を発した。けれども支持を広げることができず、この時点での支持率は5%で主要候補7人中5位だった。
ペンス氏は撤退理由について、「今は私の出番ではありません」と語ったが、まさにその通りだ。今の共和党はトランプ氏に完全に乗っ取られてしまい、党員の中には「MAGA(Make America Great Again=アメリカを再び偉大にする)の党」と呼ぶ人もいるくらいである。
トランプ氏は何をやっても、どんなにうそをついても刑事事件で何度起訴されても支持率はまったく下がらない。それどころか連邦議会議事堂襲撃事件を扇動して平和的な政権移行を妨害した問題や、機密文書をフロリダ州の自宅に不適切に持ち出した件などで起訴されるたびに寄付金が増え、支持率が上昇しているのである。
モーニング・コンサルトが10月24日に発表した共和党予備選に関する世論調査によると、トランプ氏の支持率は62%で、2位のロン・デサンティス氏(13%)、3位のニッキー・ヘイリー氏(7%)を大幅にリードしている。
共和党内で反トランプ候補が支持を広げる余地はほとんどないため、トランプ氏が党の指名を獲得するのはほぼ間違いないだろう。そして本選でも民主党のバイデン大統領とほぼ互角で並んでおり、トランプ氏が再選される可能性はかなり高いと思われる。
しかし問題は、もし第2次トランプ政権が誕生したら、1期目とは比較にならないほど、米国の民主主義にとって大きな脅威となるだろうということだ。トランプ氏はすでに2度目の政権獲得に備え、大統領執務室に権力を集中させて独裁者のように振る舞えるようにするための準備を着々と進めているのである。