大統領権限を拡大して
行政府を思い通りに

 有力紙ニューヨーク・タイムズは、「トランプ氏とその仲間たちは大統領の権限を大幅に拡大し、これまでよりはるかに大きな権限を同氏に集中させるために行政府の再構築を計画している」(2023年7月17日)と報じた。

 それは具体的には、法律や伝統に基づいてホワイトハウスの政治的干渉を受けずに運営されている行政機関の独立性を奪い、行政機関のあらゆる部分に大統領の権限を行使できるようにするというものだ。

 たとえば、テレビやインターネット関連の規制を制定・執行する連邦通信委員会(FCC)や、企業に対する独占禁止法やその他の消費者保護規制を執行する連邦取引委員会(FTC)などの独立機関を大統領の直接管理下に置くようにする。

 また、数万人のキャリア公務員の雇用保護を剥奪し、大統領の政策遂行の障害と見なされた人たちを更迭しやすくする。そして情報機関や国務省、国防総省、司法省などの官僚を徹底的に調査し、トランプ氏が「我が国を憎む、病んだ政治階級」と批判してきた役人を解任する計画も準備しているという。

 さらにトランプ氏は議会の独立性を奪うことも検討している。たとえば、大統領の気に入らない政策およびプログラムに議会が資金を充当した場合、大統領権限を使って、その支出を拒否できるようにすることだ。

 この慣行は現在禁止されているが、トランプ氏は選挙キャンペーンサイトで、「大統領には(議会で充当された)資金の支出を差し止める憲法上の権限がある」と主張し、それを復活させるつもりだという。

 トランプ前大統領は1期目の時に、行政機関の官僚や議会などの反対によって自らの政策を実行できなかった。そのことを教訓にして大統領権限の拡大計画を準備しているというが、もしこれが実行されれば、行政機関の独立性や議会の行政府監視機能などが著しく損なわれる可能性がある。