写真:クマ,ワニPhoto:PIXTA

クマに襲われ重傷を負うなどの被害が過去最悪を記録し、日本中が震撼している。一方で動物愛護の観点から駆除反対派もいて議論になるなど、クマは2023年の一大トピックだ。他方、海外でも同様の事例がある。インドネシアのワニだ。現地に明るい筆者が、社会問題化するワニvs人間の様子をリポートする。(ジャーナリスト 竹谷栄哉)

クマの被害が過去最悪180人に
一方で駆除には批判の声も

 環境省が11月1日に公表した速報値では、2023年4~10月のクマによる人身被害が全国で180人となり、統計開始以来、最多を記録した。

 特に被害が多いのは、北海道と東北だ。秋田県北秋田市では県内の被害者数が60人を超え、岩手県内では捕獲されたツキノワグマが591頭(4月以降、10月13日時点)と過去最多を更新したという。

 各自治体とも自然保護の観点から捕獲頭数の上限を定めてきたが、今はこれを引き上げたり、人に被害を与えたクマを速やかに捕獲できるよう(県の許可を待たず)市町村の判断で対応できる特例許可を出したり、緊急対応に追われている。事態を重く見た国も、捕獲費用を補助するなど支援策を始める方針だ。

 一方で、クマの駆除に対して動物愛護の観点から批判する声もある。例えば、10月に秋田県でクマ3頭が小屋の中に居座り、地元の猟友会が駆除したと報じられた際、県には抗議の電話が殺到したという。秋田県の佐竹敬久知事は「(悪質な抗議電話は)業務妨害だ」と訴え、人命尊重の立場が優先されるべきとの考えを示した。ただし、駆除の仕方次第では抗議の声が強まると予想されるため、行政も慎重な対応が求められそうだ。

日本のクマ並みに社会問題化
インドネシアのワニ被害の実態とは

 ところで、日本のクマのように社会問題化している動物の事例がある。東南アジアはインドネシアのワニだ。

 インドネシアは東西5110キロメートル(アメリカの西海岸から東海岸までとほぼ同じ)にわたる大小1万7000以上の島々からなる国で、国土面積は日本の約5倍。熱帯気候であり、足を持つ爬虫類で最も大きいワニにとっては住みやすい楽園だ。しかし、人間との共生となると、さまざまな問題が浮かび上がる。現地報道から具体的に見ていこう。