「助けてー!!」。20年8月、西スラウェシ州中央マムジュ県で、川で大便をしようとした女性(40歳)が後ろから体長7メートルもの巨大ワニに襲われた。女性は一瞬で水中に引きずり込まれ、捜索隊の努力もむなしく遺体はいまだ見つかっていない。このように地元住民が川で襲われる悲劇は枚挙にいとまがなく、ごく一例として今年7月にはバンテン州の川で貝を探していた男性がワニに襲われ死亡している。
インドネシアでのワニによる人身被害は甚大だ。BBCニュース(インドネシア)によると、14年~23年8月までに980人がけがをするなどの被害に遭い、そのうち455人が死亡したという。筆者の肌感覚では、この数は氷山の一角にすぎず、特に地方では報告・調査しきれていない事例がまだまだ多いと思われる。
大変悲しいことに子どもが被害に遭うケースも多い。例えば20年4月にはマルク州で、行方不明だった7歳の子どもが、体長約4メートルのワニの腹の中で発見された。
危ないのは川辺だけではない。今年4月には西ヌサ・トゥンガラ州の海岸で漁をしていた男性が犠牲になった。仲間が通報し捜索が行われた結果、男性が消えた場所から500メートル離れた場所に片足のない遺体が発見されたという。
なお、13年~22年にマレーシアでは173人がワニ被害に遭い、うち117人が死亡。インドでは106人が被害に遭い、うち53人が死亡したという(前述のBBC)。アジアでも特にインドネシアにおけるワニ被害が際立っている。
というのも、インドネシアのワニは大型の個体が多いからだとみられる。昨年捕獲された人食いワニは、体重700キログラムもあった。また、20年にはカリマンタン島北部で「体長15メートル、幅2.5メートルの超特大ワニが見つかった」というGoogleマップ上の写真がSNSで話題をさらうなど、その信ぴょう性はさておき、ワニはインドネシア国民の一大関心事であることは確かだ。