「生きた犬」をワニのいけにえに…
怒り狂った人間がワニに復讐で大虐殺
インドネシアでは人を襲う危険生物として見なされているワニだが、時に、人間による事件に巻き込まれることもある。
今年、何とも残酷な動画が発端となってインドネシア中が騒動となった。男2人が、生きている犬を、ワニにエサとして放り投げる動画がSNS上で拡散したのだ。現地では、男らがこの野犬に弁当を何回も盗まれたことへの報復で行った、と報じている。しかし、犬に対してもワニに対しても動物愛護の観点を含めて猛烈な批判を浴びたことは言うまでもない。
また、ワニ被害に怒り狂った人間が復讐するケースも発生した。18年7月、西パプア州ソロンで地元住民の男性がワニ被害に遭い死亡。近所にワニの繁殖・飼育施設があったことから、男性の親族や友人、地元住民ら計400人が暴動を起こし、警察の制止も振り切って飼育施設に突入。ワニ292匹を虐殺したという。
人里に出没するクマが増えたのはなぜ?
猛暑、環境破壊、農業人口の減少…
さて、日本のクマとインドネシアのワニによる人身被害には、共通点がある。そもそも野生動物が人間を襲う背景に、人間による土地開発や環境破壊がある。
元来クマは木の実を食べた後、糞をしてそれを運ぶほか、人間にとって有害なスズメバチも食べるなどして森の生態系を守ってきた。しかし、生息地域が狭まるなどしてエサがなくなり人里に下りてくるように。特に今年は猛暑や少雨の影響によるエサ不足が指摘されている。また、農業人口の減少で常に畑を耕す人がいなくなり、人間に対する警戒心が薄れているともいわれる。
ヒグマの生息地である北海道では1990年以降、ヒグマ保護を目的として冬眠明けの「春グマ」の駆除を禁止していたが、ヒグマの増加に伴う被害拡大を受けて今年から33年ぶりに春グマ駆除を再開した。ただ、猟師の高齢化もあり、駆除が再開されたからといって生息数を急に減らすことは難しいという。
インドネシアのワニも、人間がワニ皮を狙って乱獲や無理な繁殖をしたり、鉱山開発の過程でワニの生息地を荒らし奪ってきた経緯がある。
筆者はもちろんクマにもワニにも襲われたくないが、ただ、元はといえば人間が彼らに襲われる原因をつくってきたと考えている。人身被害が1件でも少なくなるよう、野生動物と共存する道が改善されることに期待したい。