8代目の遺志を継ぎ、改良信交の酒造りに情熱を注ぐ婿杜氏

新日本酒紀行「あら玉」蔵創業は1797年 Photo by Yohko Yamamoto

 全国新酒鑑評会で、昭和の末にはゼロに近い金賞が、2023年は20蔵も受賞し全国一に輝いた山形県。この美酒の礎を築いたのが、山形県研醸会の初代会長で和田酒造8代目の和田多聞さんだ。岩手県は南部杜氏、秋田県は山内杜氏という酒造りの技術集団があるが、山形は各蔵独自に行い情報交換や技術研鑽が皆無。多聞さんは将来を危惧し、当時の山形県工業技術センターの小関敏彦さんに協力を仰ぎ、研醸会を設立。技術向上に尽力した。

 多聞さんが情熱を注いだのはもう一つ、酒米・改良信交の復活だ。うまい酒が醸せるが、草丈が高く栽培が困難で絶滅寸前。種もみを持つ農家を探し、契約栽培を行う。だが21年、多聞さんは75歳で急逝してしまう。