16日午前11時ごろ、東京都千代田区二番町にあるイスラエル大使館付近に車が突っ込み、警戒中の警視庁機動隊員1人が負傷する事件が発生した。元公安警察の勝丸円覚氏は、11月15日公開の記事「『VIVANT』監修・元公安の豪華解説!「イスラエルの失態とハマスの誤算」」にて、イスラエル・ガザ戦争が日本人にもたらす被害について予言していた。今回の事件に関する分析と今後私たちが気を付けるべきことについて改めて話を聞いた。(取材・文/ダイヤモンド・ライフ編集部 松本幸太朗)
ーーついに日本でもイスラエル・ガザ戦争に起因すると思われる被害が出てしまいました。
今回に限らず、国際問題に絡めて右翼団体が事件を起こすということはこれまでもありました。例えば、2019年3月には韓国大使館前のポストを破損させる事件が起きたり、2004年の4月には在大阪の中国総領事館に右翼の車両が突っ込んだりしたことがありました。
これは、前回の記事でも触れた中核派の活動家が起こした事件と構図は同じです。注目を集める出来事に便乗する形で自分たちの主義主張を喧伝しようとします。
車で突っ込むという手段は右翼がよく使う手段なのですが、それにしても構成団体が判明するのが早かったですね。おそらく免許証を照会した段階でデータベースに引っかかったのではないかと思われます。
ーー犯人の思想と事件との関連をどのように考えますか
一部報道では、容疑者のものとみられるSNS投稿に反イスラエル的な主張があったと報じています。しかし、供述が出ていないので、現段階では本当の動機はわかりません。
実は右翼の思想は幅が広く、反米や親米、民族主義的なものまであります。「パレスチナ人を守りたい」なのか「圧倒的な軍事力の差で一方的な攻撃を続けるイスラエルを止めたい」なのか。容疑者がどのポイントに義憤をかんじたのかはわかりません。
ーー今後も日本で同じようなことが起こる可能性はあるか?
あまり知られていないのですが、イスラエル勢力に対する攻撃は日本でもすでに起きています。これが初めてではありません。
今回の戦争は、10月7日に始まりましたが 10月の20日にはイスラエル大使館の前で 日本の中核派という 江戸川区にアジトを持つ過激派に所属する24歳の活動家が、イスラエルに停戦を求める抗議活動をして、規制に入った機動隊員とぶつかって公務執行妨害で逮捕されています(10月20日付 産経新聞)。
世界に目を向けると、「在中国イスラエル大使館職員、北京市内で襲われ負傷」(10月14日付 REUTERS)など、イスラム・ユダヤ勢力への攻撃は頻発しています。
ーーこれから公安警察はどのように動く?
右翼が絡む事件となると、警視庁であれば公安第三課が動くことになります。今回の事件に触発されてイスラエル勢力に危害を加えようとする団体はないかをさまざまな手段で情報を収集したり、コンタクトを取り始めたりすると思います。
外事警察のほうも動きがあるはずです。今回大使館が襲撃されたということは、シナゴーグやユダヤ教の日曜学校などもターゲットになる可能性がありますから、緊密な連絡を取っているはずです。逆に、パレスチナ総代表部といったパレスチナ側へのコンタクトも始めているでしょう。今回の襲撃に触発されたイスラム勢力はいないかという点も外事警察が接触や情報収集をしていると思います。
ーー日本人がこれから気をつけるべきことは?
まず第一に、 今回の戦争に関連する場所に近づかないこと。今回はイスラエル大使館でしたが、 日本にもユダヤ教の宗教施設である シナゴーグなどがあります。
平日であればお勤めの会社やアポイントメントがある場所の近く、 休日であれば ご家族と出かけたり、恋人とデートに行ったりする場所の近くにこのような施設がないか確認するといいでしょう。通勤経路にもそうした施設がないか調べておくことをおすすめします。 簡単な調べ方としては、 検索エンジンで「(地名) シナゴーグ」などと調べていただくと出てくると思います。