全体に流れる“空気”が時間を短く感じさせた

 第2回の読書会もいよいよクロージングの時間を迎えた。チャットには、「オンラインで交流できてよかった」「参加者の方のそれぞれの活動や日々悩まれていることが参考になり、共感する部分が多かった」「今後もみんなでつながる機会があったら嬉しい」「この本は実践と結びつけることで腹に落ちると思った」といった感想が次々と投稿されていく。

「教室を出たら、事を成すのみ。この本を参考に、少しの気づきや言葉、行動を、明日から実践に活かしていってください」と、中原教授は参加者全員に語りかけた。

 こうして、3時間強のオンライン読書会が終了した。長丁場にも関わらず、私が、あっという間に感じたのは、全体に流れる“空気”によるところが大きいだろう。中原教授が気になったことを次々とチャットに投稿し、質問にもフラットにダイレクトに答える。それに対して、司会進行役の広瀬さんが柔らかなトーンで受け応えし、会を進めていく。そのテンポのよいやりとりが、心地よい空気を生み出し、緊張感を覚えることなく参加できた。それでいながら、チャットを通した学びやブレイクアウトルームでのディスカッションの内容はとても濃く、単なる読書会を超えて、まるで1本の研修を受けたような充実感があった。これが無料とは、なんと贅沢なのだろう。

 また、オンラインであることに加え、「耳だけ」の参加スタイルを設けたのも、今回の読書会の特長だった。読書会後の私の取材で、広瀬さんは「どこにいても、(書籍を)未読でも、人材開発・組織開発に詳しくなくても、誰でも参加し、語り合い、学び合える機会を作れたのではないかと思います」と語ってくれたが、まさにその言葉のとおり、あらゆる人が参加しやすい工夫がなされていた。

 終了後の参加者アンケートでは、「本と読書会のおかげで頭の中が整理された気がします。早速、明日の実務に役立たせます」「プレゼンターの方のプレゼンや皆さんの議論を聴くことで、本の内容の理解が深まった」などの声が集まった。私自身も、この読書会を通して、最初は難解そうに思えた書籍の内容が、とても分かりやすく、人材開発・組織開発の真髄を丁寧に伝えていることを感じ取った。

「著者の中原淳教授がこの書籍にかけた思いである、“本書が、人事同士、人事と現場、人事とベンダーの共通言語となることで、よりよい人材開発・組織開発の実践、そして、経営・現場へのインパクトにつながること”を、僕も願っています」(広瀬さん)

 読書会の参加者たちが持ち帰った「学び」は、これから、それぞれの職場で価値ある「実践」へとつながっていくだろう。