先を予測できない時代に緻密な計画なんて無意味である。では、そんな時代にやりたいことをどのように実現していけばいいのか?大学生でカリスマブロガーとなり、電通を経て現在は美容クーポンサイト「キレナビ」編集長を務める伊藤春香(はあちゅう)さんと、生活実験「ノマド・トーキョー」で都市を旅するように暮らし、『僕らの時代のライフデザイン』を執筆した米田智彦さんが、主体的な生き方、働き方について語り合った。

25社の大手企業をスポンサーに付け、
タダで70日間世界一周を実行した女子大生

米田:「さきっちょ&はあちゅうの恋の悪あが記」のブログ、僕もリアルタイムで読んでいましたよ。

伊藤:本当ですか?ありがとうございます。もう9年も前ですね。2004年だったので。

米田智彦(よねだ・ともひこ) 1973年、福岡市生まれ。青山学院大学卒。研究機関、出版社、ITベンチャー勤務を経て独立。フリーの編集者・ディレクターとして出版からウェブ、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、イベント企画まで多岐にわたる企画・編集・執筆・プロデュースを行う。2011年の約1年間、家財と定住所を持たずに東京という“都市をシェア”しながら旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー」を敢行。約50カ所のシェアハウス、シェアオフィスを渡り歩き、ノマド、シェア、コワーキングなどの最先端のオルタナティブな働き方・暮らし方を実践する100人以上の「ライフデザイナー」と出会い、その現場を実体験する。

米田:女子大生2人がクリスマスまでに彼氏を作る、というテーマが初々しくて面白くて。今思えば、ブログを使ってネットとリアルを掛け合わせるという手法の先駆けでしたね。

伊藤:そうですね、早い方だったと思います。いいタイミングでブログというものを知ることができたのは運がよかったな、と思っています。

米田:それで18歳にして一躍カリスマブロガーになって書籍も出版し、次は大学の卒業旅行で「タダで70日間世界一周をする」というプロジェクトを立ち上げて話題になった。

 ぼくも2011年1月から1年間、家もオフォスも持たずにトランク1つで東京を旅するように暮らす「ノマド・トーキョー」という生活実験型プロジェクトをやったんです。それは自分で思い立って始めて、結果的に不動産会社などがシェアハウスを提供してくれたんですが、はあちゅうさんの場合は最初から25社もの大手企業スポンサーを付けて世界一周を実行してしまったわけですから、その行動力には本当に驚かされます。

伊藤:そんなふうによく言われるんですが、実は私、自分では「行動力がある」と思ったことはあまりなくて……。

米田:え、そうなんですか?!

伊藤春香(いとう・はるか) 美容クーポンサイト「キレナビ」編集長/ソーシャル焼き肉マッチングサービス「肉会」代表。週末作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。在学中にブログを使って、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、女子大生カリスマブロガーと呼ばれる傍ら、レストラン、手帳、イベントなどをプロデュースするなど、「はあちゅう」名で幅広く活動。2009年電通入社後、中部支社勤務を経て、クリエーティブ局コピーライターに。2011年12月に転職し、トレンダーズで美容クーポンサイト「キレナビ」編集長に。愛称は「はあちゅう」。

伊藤:世の中には会社を興したり、すごく危険な場所を旅したりと、行動力のある人ってたくさんいるじゃないですか。私はただいつも貪欲に、「やりたいことをやる」方法を考えているだけなんです。世界一周したときも、企業にまず企画書をメールして、アポイントを取りますよね。次に直接会社に行ってプレゼンして、「お金ください」ってお願いして。

米田:いや、十分にパワフルですよ!

伊藤:たぶん私、「恥知らず」なんだと思います(笑)。普通の人だったら恥ずかしいとかいろいろ考えちゃって前に進めないところを、「絶対に面白い」って思ったら、実現するために何をしたらいいかを考えて、すぐに行動を起こしてしまう。行動力というより、事を起こす「スピード」になら少しは自信があるかもしれません。

米田:じゃあアイディアが思い浮かんだら、計画と行動を同時に進めていくんですね。リサーチをして情報を集めながら、人にも会いに行って。

伊藤:だいたいそうですね。私、頭がいいほうではないので、「できないシミュレーション」ができないんですよ(笑)。とりあえず考えを人に見せて意見をもらい、そこで褒めてもらったら次にいくし、だめなら直す。その繰り返しです。