これまでLuupは米国のGPS衛星を使用し、機体の位置を取得してきた。だが、GPSの測位誤差は数メートル程度。機体が走行しているのが車道なのか歩道なのかといった区別は難しい。そこで目をつけたのが、みちびきを活用し、高精度な衛星測位を行う「サブメータ級測位補強サービス」だ。「みちびきでは機能を制限する代わりに日本での精度を上げている」(岡井氏)ため、測位誤差を数センチメートル程度にまで抑えられるという。

具体的にはサブメータ級測位補強サービスの利用に必要な受信機「QZ1」を実証実験用の機体に装着。QZ1を装着した機体は1月より都内を走行し、位置情報測位データを収集している。3月からは走行データの分析を行い、走行箇所判定の精度を検証していく計画だ。機体の正確な走行位置を把握することで「スピードを強制的に制限することも可能となる」と岡井氏は言う。

「事故が頻発する交差点に進入するであろうユーザーに対して、直前に『気をつけてください』『その交差点では多くの事故が発生しています』といったアラートを出すこともできるようになります」(岡井氏)

海外ではすでに「歩道侵入で即走行不可」の事例も

同様の取り組みは海外で先行している。電動キックボードシェアの世界最大手である米BIRDは2021年10月、高精度測位サービスを展開するスイスのu-bloxと共同で、センチメートル級の精度を持つ歩道検知技術、「Smart Sidewalk Protection」を発表した。

BIRDとu-bloxでは人工衛星を利用した位置情報(GNSS)、車載センサー、高精度マップを組み合わせ、機体が歩道に進入するとユーザーに警告が届き、走行できなくなる仕組みを実現した。2021年にはウィスコンシン州・ミルウォーキーやカリフォルニア州・サンディエゴなど、米国の一部地域でテストを実施。2022年にはより広く展開していく。

 

また電動キックボードシェア「LINK」を展開する米スタートアップ・Superpedestrianも、「Pedestrian Defense」という安全システムの本格導入に向けて動いている。Pedestrian Defenceでは精密な位置情報をもとに、歩行走行や逆走といった違反走行をリアルタイムに検知し、機体を制御する。同社ではPedestrian Defenseに対応した新たな機体を開発し、2022年中に米国と欧州の25都市に展開することを目指している。