投資家にとっても、RBFには利点がある。まず、投資先の取締役会に席を置く必要がなく、投資のための評価作業(バリュエーション)も不要だ。RBFにより提供した資金が有効に活用され早期に売上が増加すれば、資金の回収も早まるため、投資家とスタートアップの双方にとってメリットがある。

SaaSやD2Cビジネスの資金調達に日本でも活用され始める

RBF、あるいはそれに類似した事業資金調達の仕組みは、古くは石油やエネルギー業界で利用されてきた。そして薬品開発や映画製作の業界で活用されるようになった後に、スタートアップ企業の成長資金の調達手段として注目されるようになる。近年ではリカーリング型モデルのビジネスへの適用が進んでいるところだ。

RBFを活用してSaaSスタートアップへの投資を行うVCには、米国のNovel CapitalBigfoot CapitalLighter Capitalなどがある。また、カナダのClearco(旧Clearbanc)や英国のValerian Fundsなども、D2Cをはじめとする欧米の消費者ブランドに向け、RBFによる投資を行っている。

日本でもいくつかの企業がRBFを新しい資金調達手段として提供を始めている。2021年4月にRBFサービスの「Yoii Fuel」をクローズドベータ版として提供開始したYoii(ヨイ)は、同年10月にシードラウンドで約1億円、2022年2月には追加で2500万円の資金調達を実施している。また「Flex Capital」を1年余りベータ版として提供してきたFivot(フィボット)も、間もなく正式なサービス開始を予定している。

Fivot代表取締役の安部匠悟氏によると、同社はベータ版としてすでにSaaSやD2Cスタートアップを中心とした数十社に1社数千万円程度の資金を提供してきたが、現時点でのデフォルト率は0%だという。今後は1社5000万円から1億円程度の提供も想定する。RBFを提供する事業者は債権を譲受する際、一定額ディスカウントして資金を提供し、その差分額でマネタイズする。海外ではおおよそ債権の6〜12%をディスカウントするケースが多く、Fivotも今後同程度の料率でのビジネスを検討している。

今後、サブスクリプションビジネスが活性化している日本でも、従来より利用しやすい資金調達手段として、RBFの活用が広がると考えられる。