スタートアップが頭を悩ませる大きな課題のひとつが成長資金の確保であることは、揺るぎない事実だろう。より早く、大きな成長を遂げるには、外部からの資金調達は欠かせない検討事項だ。しかし、創業間もない赤字企業が銀行などから融資を受けるのは非常に難しい。そこで第三者割当増資──新株を投資家に引き受けてもらうことで資金調達を実施することになるが、株式発行には時間や労力もかかり、調達後には投資家からリターンを求められるようになる。
そうしたスタートアップから今、注目され始めているのが「RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)」と呼ばれる新たな資金調達手段である。欧米を中心に、調達手段として活用が広がっているRBFについて説明したい。
「RBF」とはデットとエクイティのハイブリッド型の調達手段
Revenue-based finance(レベニュー・ベースド・ファイナンス、RBF)は、日本語にすると「収益還元型金融」。Royalty-based finance(ロイヤリティ・ベースド・ファイナンス)とも呼ばれ、スタートアップなどの資金調達手段の1つである。「将来発生が見込まれる売上(債権)を譲渡する」というスキームを活用したもので、投資家は企業の継続的な総収入の一定割合と引き換えに出資し、事業収入に応じた金額を、あらかじめ決められた金額が支払われるまで受け取る。
RBFはしばしば、金融機関などによる融資(デットファイナンス)とエンジェルやベンチャーキャピタル(VC)による投資(エクイティファイナンス)の中間に位置付けられる。RBFでは、銀行融資などで求められる担保や創業者の個人資産などによる保証は必要としない。また投資家から出資と引き換えに株式(持分)を求められることもない。スタートアップは株式を希薄化することなく、将来の売上を現金化して、成長資金を確保することができる。
サブスクリプション型のSaaSやD2Cなど、継続的に収益が発生するリカーリング型ビジネスでは、売上予見性が高いため、RBFとの相性が良い。「LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)」ベースでの利益は見えているものの、足元のキャッシュフローに苦しむスタートアップのキャッシュの“ズレ”を埋め、より機動的な成長につなげることが可能になる。