また、クリエイターの最終アウトプットではなく、制作過程をコンテンツ化してしまう「プロセス・エコノミー」の考えとも相性が良いと考えます。たとえば、こちらのバットマンの描写プロセスは20億円以上で販売されています。成果物が成功であろうが失敗に終わろうが、プロセスや、やりとりの履歴にコンテンツ性を持たせ、価値が付く時代になりつつあります。

makersplaceの販売ページのスクリーンショット
makersplaceの販売ページのスクリーンショット

10〜20年後になって作品が売れるようになれば、今は無名のクリエイターであっても高い価値がつきます。こうした未来を見越し、制作過程の記録データをこぞって撮り溜めておく習慣が生まれるかもしれません。デジタル世界において、あらゆる「プロセス」に価値がつくようになる中で、どんな瞬間もコンテンツにしてしまうクリエイターが多く生まれそうです。

空間が売買される、メタバース時代のNFT

IGDBのFortniteのページより
IGDBのFortniteのページより

最後に紹介するのが 「スペース」。私たちは普段からさまざまなデジタル空間に入ってやり取りをしています。ライブストリーミングが一般化してからこの流れは顕著になりました。

たとえば、Twitter SpaceやClubhouseのRoom、Instagramのライブ配信など、各ユーザーやテーマ別に仕切られたデジタル空間を行ったり来たりしながら、その場でしかやり取りされないコンテンツのやり取りを体験しています。こうした空間体験そのものをNFTとして残し、売買できるようになるでしょう。

まさにこの領域に取り組んでいるのがドキドキが展開する「オーディオメタバース」です。オーディオメタバースでは、オーディオ空間「キューブ」内でのやり取りが保存できます。保存された音声空間データはNFTとして市場売買できるようになります。データの所有者は、空間データに入れば、いつでもその空間内でのやり取りを再体験できる、という仕組みです。友人との会話や、音楽イベント等の体験をいつでも振り返れるようになります。

NFTと並んでキーワードになりつつある「メタバース」。より三次元性を帯びたデジタル世界を指すようになりつつある昨今のメタバースでは、スマートフォンによる二次元でのやり取りではなく、私たちが実世界で体験するような三次元空間が無数に生まれます。それぞれの空間を「キューブ」のようにとらえ、各空間で発生した体験価値をNFTとして販売、誰もが追体験できるような流れができつつあります。

1つ目に挙げたバスケットボールのダンクシーンは二次元データでしたが、空間データになると、歴史的なイベントが発生した「空間そのものを所有する」価値が発生するでしょう。この価値観はメタバースがより一般化することで加速していくと感じます。