ここではリーグが公式で撮影した試合風景の一部、歴史に刻まれる「エピック」な瞬間に価値がつきました。歴史の1ページとして世界的に評価されるコンテンツの所有を誰もができるようになりました。これはファンにとって自己承認欲求を満たす、とても良いきっかけになるでしょう。憧れの選手の、あの瞬間を「所有」していると認められれば、世界中のファンからも羨望の眼差しを受けるはずです。

さて、バスケットボールのシュートシーンの売買で起きている事象は、YouTuberのクリエイター業界にも波及するのではないかと考えています。たとえば、YouTubeで爆発的な人気を誇るようになった「THE FIRST TAKE」。新進気鋭のアーティストが、一発撮りする形で即興で曲を歌います。私たちは彼らの音源動画をYouTubeで無料で、どこでも楽しむことができますが、この元データがやり取りされるとなればどうなるでしょうか?

ブロックチェーンによって「一発撮り」という高い付加価値あるデータの証明がされ、デジタル音源データは、後世のファンたちの間でも売買され、年月を経るたびに売買価値が上がるかもしれません。

また、人気YouTuberの動画の中でも数百万、数千万の再生回数を叩き出した動画のワンシーンを、NFTとして切り売りするような流れがすぐにでも一般化するかもしれません。これは音楽シーンの事例になりますが、実際アーティストの坂本龍一氏は自身の楽曲『Merry Christmas Mr. Lawrence』の右手のメロディー595音を1音ずつデジタル上分割し、NFT化して販売しています。

これまで1つの作品しか販売できなかったり、作品から得られる広告収入しか収入源がなかったりしたクリエイターにとって、作品の「一部」に価値を付けて販売できるようになりました。この時代の流れはクリエイターに柔軟な収益源と新しいクリエイティブの余地を与えることでしょう。「エピック・モーメント」に売買の仕組みをNFTがもたらしたことで、ユニークな作品販売のアプローチが成されると考えられます。

プロセスや履歴が価値になるNFT

次に「プロセス」に関して紹介していきます。この価値を象徴するのが、Twitter創業者のジャック・ドーシー氏が自身の最初のツイートを売り出し、290万ドル(3億円相当)で落札されていた件です。SNS上でやり取りしたコミュニケーションの履歴も売買されるようになった出来事でした。今後、たとえば友人とのチャット内容や、TwitterやFacebook上での議論の履歴ですら誰かが価値を見出し、すべてを売買できる未来がやってくるかもしれません。