福田氏によると1号ファンドでは紀陽銀行やマネーフォワードを含む数社から数億円を集めており、今後最大で50億円規模を目指す方針だ。スタートアップのニーズに合わせて新株予約権付融資などのスキームも含めた資金調達手段を提供する。

投融資にあたっては福田氏自身が前職のトパーズ・キャピタル時代から成長企業への融資を手がけてきた中で培った経験だけでなく、株主でもあるマネーフォワードシンカとWARCの知見やネットワークも活用していく。

1社あたりの投融資金額は数千万円〜数億円程度の予定。主にアーリーステージ以降のスタートアップに対して資金を供給する。対象領域については限定しないものの、事業構造上は「日々売り上げがたっており、比較的事業の波が少ない領域」が特にデットファイナンスと相性が良いという。SaaSやD2C、Fintechなどがその具体例だ。

また、用途としてはいわゆる「ブリッジファイナンス」としての利用などがスタートアップやVC双方からニーズが高いそう。数カ月後〜数年後の事業の見通しは立っているものの、そこまでの運用資金を集める必要がある際、デットファイナンスであれば株式の希薄化を防ぎながら成長資金を確保することができるからだ。

日本でもデットファイナンスは数千億円規模になりうる

福田氏はUFJ銀行(現 : 三菱UFJ銀行)や企業再生支援機構(現 : 地域経済活性化支援機構)など数社を経て、2014年にプライベート・デット・ファンドを運営するトパーズ・キャピタルに創業メンバーの1人として参画した。

福田氏自身が新興企業への融資に携わるようになったのも同社に入社してからで、その際の経験がSDFキャピタルの創業に大きく関わっているという。

「知人やスタートアップの関係者から『(業界向けのデットファンドは)ニーズがある』と言われていたのですが、自分自身がスタートアップ業界の出身ではなかったこともあり、最初はあまりピンときていませんでした。VCもあるし、規模が大きくなれば銀行(融資)などの選択肢もある。でも実際に案件に関わっていく中で、リスクや資金使途、タイミングなどの観点から銀行とVCの間にはすきまがあることを知りました」(福田氏)

福田氏はトパーズ・キャピタルにおいて、約7年で10社程度の新興企業に融資を実行した。だが、その一方でファンドの条件などに合致せず「良い企業だけど断らざるを得ないこともあり、随分と機会を逃してしまった感覚もあった」と当時を振り返る。