具体的な投資検討がかなり進んだ企業で約20社、その前段階で断らざるを得なかった企業も含めると100社ほど。その中には後の急成長企業や上場企業も数社含まれていたという。

「スタートアップのファイナンスに詳しい方からは、福田さんがやろうとしてことは『Silicon Valley Bank(シリコンバレーバンク)だよ』と言われます。米国では同社を筆頭に(スタートアップを対象とした)デットファンドがいくつも存在し、エコシステムを支えている。金融でも米国の数年〜数十年遅れで日本においてトレンドになるということがあるので、ベンチャーデットに関してもこれからチャンスがあるだろうと考えました」(福田氏)

実際にトパーズ・キャピタルで融資に関わり始めた2014年と比べても「この数年でデットの活用が加速している感覚がある」というのが福田氏の考えだ。自身の実体験や海外の状況に加えて、国内のスタートアップのCFOやVCなどからも需要が大きかったことを受け、スタートアップデットファンドの構想を練り始めた。

当初は社内で立ち上げることも考えたが、最終的にはスタートアップ向けに注力したファンドを作るために、独立する道を選んだという。

SDFキャピタル共同創業者でマネーフォワードシンカの代表取締役を務める金坂直哉氏(マネーフォワードの取締役執行役員CFOも担う)は、福田氏が独立前から「スタートアップにおけるデット調達のニーズ」を聞いていたうちの1人だ。トパーズ・キャピタルを退職後には真っ先に連絡を取り、共同でのプロジェクトの立ち上げについて議論を重ねた。

もう1人の共同創業者でWARC取締役の石倉壱彦氏も、同じように自身がCFOや投資家として複数のスタートアップのファイナンスに関わってきた人物だ。

「米国では(エクイティラウンドの)2〜3割をデットが占めるとも言われています。(日本のスタートアップ調達額を)8000億円〜1兆円程度と仮定した上で純粋に当てはめると、国内のデットマーケットは数千億円規模になりうるだけのポテンシャルがある。でも僕の感覚では、もしかしたら現在は100億円にも届かないのではないかというくらいの状況です。この市場が拡大していけば日本のスタートアップの飛躍的な成長にもつながると思うので、スタートアップデットを通じて企業価値を上げていくサポートができればと考えています」(福田氏)