ANYCOLORのビジネスモデルを読み解く「3つのポイント」

ANYCOLORは、VTuberプロジェクト「にじさんじ」を運営しています。マネタイズについてですが、大きく3つのポイントで見ると分かりやすいです。

1つ目が、ライブストリーミングです。配信者がYouTuberなどで配信しながら、ギフティングのSuper ChatやYouTubeメンバーシップ、Google AdSenseで収益を得ます。

2つ目が、コマースです。VTuberのオリジナルグッズやVTuberの音声を録音したデジタル商品を販売、ファンクラブの運営、イベントを開催することで収益を得ます。「にじさんじオフィシャルストア」での販売がメインになっていますが、運営は株主でもあるソニー・ミュージックの子会社のソニー・ミュージックソリューションズに委託しています。

3つ目が、プロモーションです。タイアップ広告やIPライセンス、メディア出演をすることで収益を得ます。

VTuberのようなIPビジネスの場合、ライブストリーミングの収益が大きくなってしまいそうですが、ANYCOLORはすでにコマースの売上が大きな割合を占めています。

出典:ANYCOLOR決算説明資料
出典:ANYCOLOR決算説明資料

IPをもつエンターテイメント企業において、マネタイズ手段を複数持っており、なおかつバランスよく収益を上げることは成長性や企業の存続において重要なポイントです。日本では、ソニーやバンダイナムコのような比較的体力がある会社に限られると思います。

また、エンターテイメント企業において重要なポイントは、再現性です。1つのIPで大きく成功していても(1つを成功させることも難しいですが)、次が続かずに廃れていってしまっている会社も多いのが現状です。中には、Netflixのように莫大なデータ・莫大な資金・大勢の優秀な人を生かして大量にコンテンツをつくり続けたり、ディズニーやソニーのようにそもそもIPを買収したりしてくる会社もあります。

そのような中でANYCOLORの場合は、まずコンスタントに数を生み出し、その中のいくつかをしっかり伸ばしてきた結果、チャンネル登録数が特定のチャンネルにかたよらずに複数のIPが立ち上がっています。具体的には、100万人以上が3人、50万人以上が20人いますが、これらのすべては直近5年以内に立ち上がったVTuberです。

上場直前に投入した新VTuber「壱百満天原サロメ」は、あっという間に100万人の登録者を獲得しています(6月20日時点では133万人超)。このように再現性高く人気VTuberを生み出せるのは、これまでのIPを育ててきたケイパビリティのたまものでもありますし、配信者のマインドによるところもあると思います。