上場承認時の株式(潜在含まず) 図は筆者作成
上場承認時の株式(潜在含まず) 図は筆者作成

続いて、想定価格と初値におけるマルチプルです。想定価格での予想PERの18.4倍とかなり抑えられたものになっています。

マルチプル 図は筆者作成
マルチプル 図は筆者作成

そして、今回の公募と売出しについてです。今回の売出しのメインは、もともとはアドウェイズやKLabなどのエンジェル投資家でしたが、最終的にSkyland Venturesも少し売出しに応じています。直近のトレンドでは、上場時に大半のVCに売出しに応じてもらいながら、機関投資家に投資してもらうことでオーバーハング(上場後の売り圧力)を抑えることが多かったと思いますが、後半のラウンドに入ったVCは売却せず、流動性も絞った上での上場になりました。

また、直近のトレンドでは、売出し先の大半を海外とすることが多かったと思いますが、国内での販売が大半になっています。個人的な推測ですが、やはり想定価格を含めて低いと思われていたのかなと思います。

上場後のANYCOLORはどうなる? 注目すべき「4つのポイント」

出典:ANYCOLOR決算説明資料
出典:ANYCOLOR決算説明資料

最後に、今後の展開についてみていきます。成長可能性の資料にもある通り、対象となるTAM(獲得可能な最大市場規模)は大きく、動画広告や音楽市場への拡大をめざしています。また、所属VTuberの安定的な増加や育成強化、VTuberの構成の強化、プロモーション強化、ライバーのコンテンツ配信サポート、海外との可能性を膨大に秘めています。

一方、上場したANYCOLORについて、個人的に注目している観点が4つほどあります。

1つ目は再現性をどこまで維持できるのかです。育てるケイパビリティを持っていることは理解しつつ、配信者に頼っているところは多分にあるので、しっかり配信者を獲得し続けられるのかどうかは注目しているポイントです。

2つ目は、ひとつのIPでどこまで伸ばすのか。基本的にユーザーのリーチと単価の両方を上げるのは難しくなっています。そのような中で単価を上げにいくのか、もしくはリーチ数を増やすのか。はたまた両方を狙うのか。注目しています。(参考リンク

3つ目は、同じくVTuberの事務所である「ホロライブ」を運営する競合スタートアップ・カバーの動きです。カバーは莫大な登録者数を誇るVTuberを複数持っており、今後の動きに注目です。最後は、VCを始めとした大株主の動きです。時価総額は大きくはねた一方、ロックアップ前からどのように対策していくるのか。外銀出身CFOである釣井慎也さんの評価も高く、腕の見せどころだと思います。