まず、ヌーラボのメインサービスであるBacklogは、いわゆる「プロジェクト管理ツール」に分類される製品です。プロジェクト管理ツールは近年そのニーズが拡大しており、BtoB商材のマッチングプラットフォーム「ITトレンド」の公開したデータでも、「売上が増大したカテゴリー」として上位に入っています。同じ領域に入る製品としては、海外では「monday.com」「Asana」「Notion」、日本ではPR TIMESが提供する「Jooto」などがあります。

問い合わせ数が増えたサービスカテゴリー 画像出典:イノベーションIRより
問い合わせ数が増えたサービスカテゴリー 画像出典:イノベーションの決算説明資料より

また、海外ユーザーの比率が高いビジュアルコラボレーションツールのCacooは「Canva」「Miro」「Prott」、ビジネスチャットサービスのTypetalkは「Slack」「Chatwork」、ID管理ツールのNulab Passは「HENNGE One」などが競合サービスとして比較対象になるかと思います。

日本では複数のSaaSを提供している会社は少ないため、時価総額が高かったり、マルチプル(企業価値評価の際に使う倍率)が高かったりするのは、複数のSaaSを提供する企業の特徴のひとつとも言われています。実際、日本の時価総額で上位のSaaSを見ると、ラクス、freee、マネーフォワード、Sansan、プラスアルファ・コンサルティングのように、成長率が高いこともさることながら、複数のSaaSを提供しているという特徴があります。

ヌーラボはこれらのSaaSを、通常のSaaSのように営業部署を抱えて販売したり、比較メディア経由で販売するのではなく、リファラル経由で導入を進めているのが特徴です。いわゆる、PLG(プロダクト・レッド・グロース、製品主体の成長)と呼ばれる戦略です。ヌーラボが上場承認された際の私のツイートにも、比較的サービスへの好意的なコメントが多かったですし、SaaSの比較メディアにおける口コミも評価が高いように思えました。

ヌーラボの販売手法 画像出典:事業計画及び成長可能性に関する事項より
ヌーラボの販売手法 出典:ヌーラボ・事業計画及び成長可能性に関する事項

また、海外にも拠点をもっているのも特徴と言えるでしょう。2013年にシンガポール、2014年にアメリカのニューヨーク、2017年にオランダのアムステルダムに拠点を置いています。未上場の段階での海外展開としては、ウォンテッドリーとビザスクがシンガポール、メルカリがアメリカとイギリス、スマートニュースがアメリカと中国、グッドパッチがドイツにそれぞれ進出していたものの、日米欧亜に拠点がある企業はあまり多くないように思います。