22世紀鯛と22世紀ふぐに関してはゲノム編集動物食品であることを表示した上でクラウドファンディングを実施し、ともに完売した。

京都府宮津市のふるさと納税返礼品としても22世紀鯛を提供しており、受け取った人にアンケートを実施したところ、60人の回答者の85%が「とてもおいしかった」、15%が「おいしかった」と回答。母数は限定的ではあるものの、このような反応などからも「味についても一定の手応えを感じている」(梅川氏)という。

直近では自社ECなどに加えて、マルイでのイベントやシーフードショーなどでも製品を届けてきた。販売してみるとゲノム編集ということに良くも悪くも関心がない人も多く、表示や説明はするものの「価格と味のほうがはるかに重要視されていることに気づいた」(梅川氏)そうだ。

一方で量産化を進め、より幅広い人に販売していく上では「ゲノム編集への抵抗感」を感じる人が増える可能性もある。ゲノム編集食品に対する消費者のイメージをどのように変えていけるのかは今後のチャレンジの1つ。梅川氏は「大学発ベンチャーで技術や安全性には絶対の自信があるので、多くの方々に知っていただき、食べていただく機会を増やしていきたいです」と話す。

トラフグの比較。ゲノム編集技術を活用した「22世紀ふぐ」(上)と養殖のトラフグ (下)
トラフグの比較。成長性が1.9倍になった「22世紀ふぐ」(上)と養殖のトラフグ (下)

「京大のゲノム編集技術」と「近大の完全養殖技術」を融合

リージョナルフィッシュは京都大学大学院農学研究科の木下政人准教授(ゲノム編集技術)、近畿大学水産研究所の家戶敬太郎教授(完全養殖技術)らの技術シーズをコアとして2019年に設立した。約30人の社員のうちの22人が研究員。博士号取得者が16人という研究開発力に長けたチームだ。

もっとも、代表の梅川氏自身は研究者というわけではない。京都大学を卒業後、経営コンサルティング企業や産業革新機構で経験を積んできた“ビジネス畑出身”の起業家だ。

「学生の時に日本の経済が衰退してるという話を聞いて、今日よりも明日の方が暗いのは絶対に嫌だと思ったんです。当時は(日本企業は)技術で勝って経営で負けていると言われていたので、それなら経営の分野でなんとかできないかと考えコンサルティング会社に入社し、産業革新機構に移った後は大企業のM&Aの支援などをしていました」

「そこで感じたのは、日本企業の技術力が必ずしも他の国に勝てているわけではないということ。1つの仮説として、昔の日本は技術力がナンバーワンでお金も稼げていたけれど、それを次なる分野にきちんと投資できずに競争力を失ってしまったのではないかと考えました。それならば、今存在する(日本発の)世界最高峰の技術で起業してお金を稼ぎ、次なる技術に投資をすればどうか。世界で戦えるような可能性があるし、もともと自分が目指していたように日本経済のためにもなるかもしれないと思いました」(梅川氏)