リモートワークによる「契約のデジタルシフト」が加速

明日からリモートワークに移行しなければならない──。4月に緊急事態宣言が発令されたことにより、多くの企業が働き方を変えた。契約業務はその代表例だ。これまでは「紙と印鑑」を用いて行っていた業務を、クラウド契約サービスによる「電子契約」に切り替える企業が増えた。

冒頭でも触れた通り、クラウドサインもそのニーズに応える形でユーザー数を拡大。4月は特にその勢いが凄まじく単月で6500社以上へ導入された。これは前年同月比で300%以上の数字だ。

4月に大きく導入企業社数を伸ばしたクラウドサイン 。8月には10万社を突破した
4月に大きく導入企業社数を伸ばしたクラウドサイン 。8月には10万社を突破した

橘氏の話ではここ数カ月で導入企業社数が増えたことに加え、特にエンタープライズの顧客で「全社導入」に至る事例が増えたという。

以前は大企業に導入される場合、まずは社内の一部門で試してもらうことが多かった。橘氏の肌感覚としても全社導入に至るのは全体の10%に満たないくらいだったそうだが、直近では半数近くの企業が全社導入を前提にクラウドサインの導入を検討するようになっている。

「雇用契約や業務委託契約など内部の契約には電子契約が使われていても、業務提携のように取引先が関わる際には相手に合わせて紙で契約をするということがよくありました。ただこのご時世に相手方に合わせるということは、法務担当者に出社を強要することにも繋がります。そこで『自分たちはそのスタンスは取りません』という意思表明として、全ての契約に電子契約を導入することを発表する企業が続々と出てきました」(橘氏)

たとえばメルカリやLINEは早い段階から電子契約への全面移行を発表していたが、両社はともにクラウドサインのユーザーだ。新規顧客だけでなく既存顧客がクラウドサインを全面的に利用するようになった事例も多く、その変化は「契約送信件数」の伸びにも顕著に現れている。

導入企業社数だけでなく、クラウドサイン上での「契約送信件数」も大きく伸びているという
導入企業社数だけでなく、クラウドサイン上での「契約送信件数」も大きく伸びているという

クラウドサインのビジネスモデルは月額の固定利用料に送信件数ごとの費用が加算される仕組みのため(たとえばスタンダードプランは月額1万円の基本利用料に送信件数あたり200円が加算される)、社内で活発に利用されるほど収益も増える構造だ。

7月27日に開催された弁護士ドットコムの第1四半期決算説明会ではクラウドサイン単体で6月の月商が1億円を超えたことも明かされていたが、「導入企業数だけでなくARPU(1社あたりの平均売上)も大きく成長している」(橘氏)という。

何百回、何千回と言われた「電子署名法に準拠しているんですか?」 

クラウドサインを筆頭に電子契約サービスが一気に広がったことで、その法的な位置付けも変わり始めている。