マックス製の鉄筋結束機を左右2台取り付けるだけで、土間・スラブなどの床面の鉄筋結束作業を自動で行えるトモロボ。鉄筋は意外と柔らかく、配筋時の誤差も1センチぐらいはあるというが、トモロボは鉄筋の幅に合わせて結束位置を変更でき、鉄筋と鉄筋の交点をセンサーで探すので、スタートボタンを押すだけでピッチが変化する環境でも自動対応して結束作業を進められる。
トモロボによる作業負担の軽減について、眞部氏はこう説明する。
「結束作業は鉄筋工の仕事の約4割を占めるため、その80%を自動化することで、床作業全体の37%を省力化することができ、作業負担を軽減できます。また今年7月に発表したオプション『トモロボスライダー』を活用すれば、トモロボが鉄筋の端に到達したときに、1人で横移動することが可能です。このため職人が1人いれば、多くのロボットを運用することができるようになりました」(眞部氏)
トモロボの定価は1台220万円。マックス製鉄筋結束機は定価22万円なので2台分の費用を加えて合計264万円が導入時のコストとなる。トモロボは1日当たり12時間稼働でき、職人1人が6500カ所の結束を行う間に1台で8000カ所の結束を行える。コスト削減だけでなく、職人を単純作業から解放することで、より技術力の必要な生産性の高い業務に集中することを可能とする。
20年で100万人が消える建設業界の危機をロボットが救う
「世界一ひとにやさしい現場を創る」をビジョンに掲げる建ロボテックは創業以来、鉄筋結束ロボットのトモロボをはじめ、建設現場の省力化のための製品を企画・開発・販売してきた。保有特許は12件。「さまざまな省力化を地道にやってきた」と眞部氏はいう。
その背景には建設業界の「存続の危機」といっても過言ではない深刻な人材減少があると眞部氏は説明する。
「2017年の建設業就業者の年代別の割合では、50歳以上が44%を占め、30歳未満は11%しかいません。しかも30歳未満の内訳は、海外からの技能実習生が10%、3年目離職想定者を合わせて考えると、44%が3年以内にいなくなる計算となります」(眞部氏)
これを人数に置き換えると、建設業界へ入る人材は今後20年で40万人しかいないのに、144万人が出て行くことになる。全体の約20%に当たる100万人が業界から消える計算だ。国内54.6兆円産業とされる建設業界は、労働者不足に加え、技術力の衰退や後継者の断絶といった大きな問題を抱えている。