眞部氏は、この問題を解決するための第1弾製品としてトモロボを開発。建設産業がロボットを活用するシーンを広げたい、持続可能な産業へと進化させたいと語る。

「人口減少の中で建設業界にも新しい生産方法が必要です。そのためには、人に優しい現場を実現するのが近道だと私は考えます。省力化技術の開発を中心に、付随するいろいろな技術を、小さなものも含めて使うことで人に優しい現場を実現したい」(眞部氏)

トモロボイメージ動画

建設労働力が不足しているのは日本だけではなく、海外でも特に高齢化が進む先進国では同様の傾向にある。建ロボテックでは長期的には、国内外の労働力不足ソリューション市場を約5兆1000億円と見込む。海外からの問い合わせもあり、アメリカ、シンガポール、韓国では海外特許を、中国でも実用新案を出願しているそうだ。

鉄筋結束ロボットの開発は、実は大手建設会社の大成建設などでも行われている。またトモロボは構造としては単純で、市販の工具を装着させて動作させる設計になっているため、追従する企業が現れてもおかしくはなさそうだ。

眞部氏は「単純なロボットなので実際マネされる可能性はあります」と断った上で、「それより先に我々はトモロボを進化させ、最初に開発した企業としてのアドバンテージを保つ」と自信を見せる。後述するが、建ロボテックとしては“トモロボを開発する会社”にとどまるのではなく、トモロボを起点としながら、建設業界の現場全体の課題解決を目論んでいる。

土木工事にも対応、将来は従量課金化・クラウド化も目指す

現在は代理店、レンタル会社を通じてロボットやワイヤなどの資材等を販売するビジネスモデルをとる建ロボテック。直近では床結束のトモロボを進化させ、完全自動化を図る。その上で、各種機能をオプションとして選択できるようにする。また、シリーズとして運搬用ロボットの開発も開始したという。

トモロボシリーズ製品開発計画
トモロボシリーズ製品開発計画

現行機種は建設業の中でも建物を作る建築作業に特化しているが、土木業ニーズへの対応もスタートした。道路橋や高架橋などの土木構造物の設計・施工を手がける富士ピー・エスの協力により、土木対応の改造型開発を今夏開始、2020年中には製品化を発表する予定だ。

建ロボテックでは今後、スタンドアローンのトモロボにセンサーを搭載し、GPSやクラウドサービスと接続することも検討しており、「いずれ従量課金モデルを目指したい」と眞部氏はいう。その根拠はこうだ。

仮に六本木ヒルズ建設にトモロボが導入されたとしたら、床面積は東京ドーム15.5個分の広さ、約72万4500平方メートルにもなる。鉄筋交点は3212万カ所。建設工事標準仕様では、交点の半数以上を結束する基準となっているので、1600万カ所の結束が必要となる。結束に必要なのべ作業人数は2600人。トモロボを導入すれば、600人に減らすことが可能だ。結束1カ所に付き1円を課金するとしても、2000人工の費用と比べればコストは下げることができる。また、建ロボテックとしても収益は十分上げられるという算段だ。