より良いサービスが生まれたとします。ですが、そのサービスを実装したところで、汗を流す公務員の給料もボーナスも変わりません。税金が浮いたとしても、使い道は沢山あります。

むしろ、何かを変えようとすると、既得権や、議員に張り付いている人たちから、色々と言われるわけなのです。そんなことをされてまで何かを変えたとしても、政治家個人に戻ってくるメリットは正直ありません。

スタートアップが展示会場で「うちのスタートアップはこんなに良いサービスを開発しているんです」と叫び、メディアに掲載された内容について褒められたとしても、サービスを社会実装するには全く別のノウハウが必要となります。

政治や行政は自分たちとは全然別の理屈と論理で動いていると言うことを理解しないまま、経済の世界の中だけで「これは良いサービスだということが何故わからないのか。このサービスは世界を変えるのに」と言っていても、“社会を変える側”の政治家は動きません。

私は(スタートアップイベントの)SLUSH ASIAに登壇した際には、「スタートアップと政治が一緒になって初めて社会が変わる」と話しました。新しいサービスやビジネスを生み出すのはスタートアップ。どういう社会であるべきかを規定するのは政治であり行政です。これを理解しなければ、どんなに良いサービスだったとしても、展示会場の外に出ることはできません。

ですので、このような(政治や行政に関する)ノウハウを、スタートアップ業界で共有することは重要です。スタートアップは一丸となり、政治に対してロビー活動をしていく。政治や行政に働きかけるためには、スタートアップが彼らにとっての“メリット”にならなければなりません。

順調に行っているスタートアップは、政治家の協力をしていきながら、自分たちの味方として取り込んでいく。もしくは選挙運動をする。影響力がある存在だと認識されないと、政治や行政の世界において、スタートアップが発言力を持つことはできません。

スタートアップの人たちに見えている氷山の下には、非常に大きな世界が広がっています。ノウハウを持っている自治体と組むことも重要ですし、そろそろ、スタートアップ業界自体も(政治や行政の)構造を理解していても良い頃なんじゃないかな、と思います。でなければ、このまま足踏みをしたままで終わってしまうのではないでしょうか。

ASCENSION 2020で狙う国際交流による“化学反応”

──11月27日に開催されるASCENSION 2020は国際交流のイベントです。イベント開催の目的を教えてください。また、これまで福岡市が台湾などの海外都市と結んできたMOUの話やその後の具体的な施策など教えてください。