そんな時によく言われるのが、「支える側と支えられる側のバランスが崩れて、支えきれなくなるんじゃないか」という議論です。
この議論に対して、「支える側の人数を増やすために少子化を解消しましょう」という話はずっとありました。ですが、人を増やすと言っても、人が増えるためには非常にさまざまな要因が重なり合わなければなりません。
私は、人が支えるところをロボットやオートメーションのテクノロジーが担えば良いのではないか、と考えています。
もちろんデジタルで全てが解決するわけではなく、役所にも、人と人との絆や、人ならではの温もりのある対応は今後も残ります。ですが、人と人との情報のやりとりについては、デジタルで行い、人を介さないことで、間違いのリスクを減らすことができます。そして、人を使わずに済みます。要するに、職員を高齢者対策や福祉の方に回すことが可能になるのです。菅(義偉)さんが総理大臣、河野(太郎)さんが行革担当大臣になり、デジタル化を一気に進めていこうという流れになりました。
一方で「デジタル化が進むことで、若い人は対応できるが高齢者は取り残されるのではないか」といったことが議論されています。つまり、“アナログ対デジタル”というような構図で物事が語られるようになりました。
私はそうは見ていません。アナログ対デジタルという構図ではない。単純に“ユーザーインターフェイス”に問題があるのだと思います。
これは、スマートフォンは難しくて使えないから抵抗があるという人でも、「(NTTドコモの)らくらくホン」(高齢者向けの携帯電話)なら使えるということに象徴されています。高齢になるにつれ、目が悪くなってくる。難しいことはわからない。ですが、らくらくホンのように機能を限定すれば、簡単に操作ができる。
高齢者の方々からすればらくらくホンはスマホとは別物かもしれませんが、裏を開けてみれば中身は同じです。今後は、デジタルを“電脳機器”的な難しい話として捉えるのではなくて、もっと丸みのある、柔らかいものとして捉えていく必要があります。そのためにはデザインの力が重要になってきます。デジタルは誰にとっても利便性の高いものにしていかなければなりません。
今、福岡市役所には約1万5000人の職員がいます。デジタル化を進める中で、各局・各部がそれぞれオンライン申請の仕組みを発注しかねない状況になったため、待ったをかけました。