基礎自治体として、常に地域の自治会長や色々なプレーヤーと普段から付き合っているからこそ、このような調整ができるのです。そして政令市で県と同等の権限があるということで、福岡市とさまざまな分野において、規制緩和なども含めて、権限の中で色々なチャレンジができます。スタートアップは福岡市で「実証実験を問題なく行えた」という事例を作り、それを持って外に出ていく。このような取り組みを続けているため、福岡市は引き続きスタートアップに選ばれているのだと思います。

──一方で、今後改善しなければならない点もありますか。

私たち福岡市はプレーヤー側ではなく、あくまでも支援側です。支援する側だけが強すぎるのは問題なので、私たちに負けないくらい強力なスタートアップに出てきて欲しいと考えています。

「負けない」とはどういう意味か。我々が発想もしていなかったようなアイデアを持つスタートアップに出てきてほしいということです。今回福岡市が開催するイベントの名前である「ASCENSION」には「次元を変える」という意味があります。

「AからBに行く」、「BからCに行く」という(段階的な)改善型ではなく、「(アルファベットの)Aからいきなり(別の言語の)アラビア語になる」ような、次元やステージの違うところに突如として飛躍する、“破壊的イノベーション”が生まれることを期待しています。

日本を良い方向へと導いてくれるような、実用的で良いアイデアを持つスタートアップは多く出てきています。ですが、破壊的なスタートアップにこそ登場していただきたいのです。

ASCENSIONのロゴはデスメタル風になっています。あのロゴであれば、「ASCENSIONを始めたいと思います。まずは開会の言葉を〇〇さんお願いします」という(いわゆる自治体が開催するイベント)風にはならないじゃないですか。ですから、「あのロゴのイメージのままでよろしく」ということなんですよね。

ASCENSION 2020のロゴ
ASCENSION 2020のロゴ 福岡市のプレスリリースより引用

「既存の企業や行政と一緒だよね」というようなスタートアップではつまらない。私個人としては、もっと面白くて破天荒なスタートアップが出てくることを期待しています。

スタートアップは「政治や行政の構造」に関する理解を深めるべき

──最近では破壊的なイノベーションを諦めているスタートアップが多いと感じています。規制を壊して戦ってきたスタートアップがことごとく負けてきたのがその理由の一端だと思います。福岡市は支援側が強いので、新しいイノベーションを起こしやすい環境だということなのでしょうか。東京都を中心としたスタートアップのエコシステムとの違いは。