──ESGとともによく聞く言葉としてSDGsがあります。その違いは何なのでしょうか。

SDGsは日本語で表現すると、「持続可能な開発目標」となります。SDGsの特徴は、その名の通り目標であることです。人類が持続可能な形で発展するために、2030年までに達成する目標です。言い換えると、2030年の人類のあるべき姿を定めたものです。一方で、ESGは企業が会社の発展のために考慮すべき項目であり、それに言及したPRIは金融機関における投資の指針です。ESGとSDGsはめざす方向性は共通していますが、ESGはビジネス視点であり、SDGsとは異なります。

──ESG投資は通常の投資とどのように違うのでしょうか。

ESG投資の投資手法は、ESGを経営リスクへの対応と捉え、そうした対応をしている企業に投資を行うもので、通常の投資に排除基準を追加する方法(ネガティブ・スクリーニング)や、社会・環境に良い影響を与える技術やサービスを提供する企業に絞る方法(インパクト投資)、株主として投資先にアクティブに働きかける手法など、さまざまな考え方があります。

その中でも最も先端的な投資がインパクト投資です。これはIFCが定めた「インパクト投資の運用原則」にあるように、投資ポートフォリオが定量的なインパクト目標を達成することをきちんとモニタリングし、その達成に向けて的確なアクションをとることまで視野に入れた投資です。インパクト投資ではESG投資の中でも非常に高い目標を掲げ、その達成にコミットメントします。まだESG投資全体の2%程度を占める規模ですが、今後はインパクト投資のシェアが拡大し、ESG投資の主流となることが期待されています。

──ESG投資には、グリーン・ウォッシュ(企業や企業の商品・サービスなどが、あたかも環境に配慮しているかのように見せる行為のこと)の発生、短期的なリターンが少ない傾向にあるといったことも聞きます。ESG投資の課題とは一体どういうことでしょうか。

日本のESG投資における課題は、ESGを差し迫った経営課題として捉えるのではなく「企業の利益の一部を社会に還元する」といった旧来のCSR的な考え方がまだまだ多く残っていることでしょう。グローバルではESGは投資パフォーマンスを高めるものであり、経営リスクを下げて利益を増やすためにESGを考慮した経営を行うことが主流です。

また、最近はESGがブームのようになっていて、マーケティング効果を狙った見せかけだけのESGも問題です。これは消費者を欺くグリーン・ウォッシュのような問題を生みますが、投資家がESGについてきちんとデューデリジェンスをすることで、きちんとESGを経営に取り入れている企業に資金が届き、ESGに反する活動を行っている企業と扱いが変わってくることが重要だと思います。