だが、「歴史で事業を興す」と言っても、すぐに理解してもらうのは難しい。

そこで広報活動の一環として始めたのが「コテンラジオ」だった。じわじわと人気を集め、今や人気Podcastランキングでは必ず上位にランクイン。支持する約14.2万人のユニークリスナーは、深井氏によれば「おもにビジネスパーソンや経営者など知的好奇心が高いリスナー」だという。COTENが公開したアンケートの結果では、コテンラジオのリスナーの半数以上が会社員、自営業・個人事業主などの就業者だった。

COTENのプレスリリースより
COTENのプレスリリースより

一体、何が彼らの心をつかんだのか。

「多くのビジネスパーソンは歴史の知識は必要だと思っていますが、いざ歴史について聞かれると意外と答えられない。歴史を知らないことに対して罪悪感のようなものを持っているんです。そのため、最近は書店などに歴史を題材にした書籍なども数多く販売されています。ただ、分厚い書籍を最初から最後まで読むのは面倒。その点、コテンラジオは“ながら聴き”するだけで歴史について学べるので、多忙なビジネスパーソンのニーズにマッチしていたと言えます」(深井氏)

「歴史を学ぶ」ために課金する人々の背景

「現代社会における“歴史を学びたい欲”はまだまだ高まる」──深井氏がそう言い切るのには3つの理由がある。

「少し壮大な話ですが、歴史を振り返り新たな哲学が生まれる瞬間には『余暇、多様な考え、未来への不安』という3つの要素があります。例えば、アリストテレスやプラトン、ブッダはほぼ同じ時代に登場しています。当時は鉄の発見とともに農耕器具が発明され、食べる物にも余裕が出始めていました。それと同時に、シルクロードができて他国との交流が生まれ、今までにない考え方に触れる機会も生まれやすかったんです」

「そして、ペルシャ戦争などが起こって生活が脅かされ『今までの成功体験が通用しない』と憂いていた時代でもありました。このように3つの要素が重なったとき、過去を振り返ってみても歴史を学ぶ意欲が高まりやすいのです」(深井氏)

現代社会において、基本的に食料に困ることはあまりない。またインターネットの登場で、自分とは違う考えに触れる機会も溢れている。それに加え、新型コロナウイルスによって未曾有の状況下にある。「歴史を学ぶ欲」が高まりやすい条件が揃っていると言うのだ。

COTENのプレスリリースより
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その証拠に、コテンラジオは基本的には無料で視聴できるにも関わらず、「サポーター」として月1100円(税込)からの金銭サポートに課金するリスナーは少なくない。なかには月2万円を支払うサポーターもいるという。現在、COTENの収益はこのアクティブリスナーからのサポートによって成り立っている。まだ黒字化には至っていない。