必要な条件は揃っている──だが、歴史を深く理解するには少なくとも数十〜数百冊の専門書を読む必要がある。それを万人が行うのは難しい。一定のルールで情報を整理し、あとは検索で自由に調べられるスタイルにすれば、歴史にもっと触れやすくなると考えた結果、深井氏は世界史データベース「coten」のアイデアにたどり着いたのだった。

歴史におけるアンラーニングがマネタイズにつながる

データベースというからには、歴史のあらゆる情報を集約していくことになる。なかでも難しいのが「ルール化」だ。

「歴史はあくまで『終わった出来事』です。これ以上データが増えていくことは基本的にないので、ビッグデータを扱うような難しさはありません。どちらかと言うと、ビジネスマンだけでなく歴史学者から見てもおかしくないルールで情報を整理するのが難しい。僕らはここ2年ほどかけてルールづくりをしてきました」(深井氏)

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cotenでは歴史上の情報を同一ルールで整理し、違う時代の出来事でも比較できるようにする。また、社会情勢を同時に盛り込むことで、歴史上の事件をその当時の気候や人口動態などを踏まえて俯瞰できる状態を目指す。これにより、例えば「部下に殺された人物」「大器晩成型の人物」と検索すれば、近しい経験をした歴史上の人物を見つけ出すことができ、当時の情勢も体系的、包括的に比較できる。

同時に、歴史を用いた他のビジネスも予定している。コテンラジオに集まった約14.2万人のリスナーをターゲットに学習サービスを展開するほか、有料コミュニティ形成、経営層向けのコンサルティングなども検討しているという。

「歴史を学ぶ魅力は、アンラーニングできるところ。長い歴史の中で培われた知見に触れると、自分の成功体験がほんの一部でしかないことがよくわかります。固執していた知識や価値観を手放すきっかけになるわけです。何より『歴史上の話』となると、生身の人間が語る成功体験よりも素直に聞き入れられる」

「データベースが完成して誰でも歴史の情報にアクセスできるようになれば、今の時代にはない新たな気づきに出会える。そうすると、世の中はより良い方へ向かうと思っているんです。とは言え、完成にはまだ時間もお金もかかります。その日まで、自分たちが死なない状態も作らなければいけないんですよね」(深井氏)

Podcastの番組からスタートしたCOTENの歴史事業。今後、世界史の歴史情報を体系的に整理し、キーワード検索やタグによる検索を可能にした上で、世界史データベースを活用した教育・事業・人材開発など幅広い分野でのサービスの展開を目指すという。