“SaaSの統合管理”に限っては8月にマネーフォワードが「マネーフォワード IT管理クラウド」を発表したほか、日本でも複数のスタートアップが参入している領域だ。だが、ジョーシスの場合はデバイスの購入や環境設定についても対応しているのが大きなポイントだろう。

在籍中の従業員については、各自が利用するITデバイスやSaaSの状況を一元管理することが可能。「誰が、どんな権限で、どのSaaSを使っているのか」が自動で更新されていくため、エクセルなどで逐一更新する手間とは無縁だ。

現在は40のSaaSに対応。年内を目処に対応SaaSの数を100種類まで広げていきたいという
現在は40種類のSaaSに対応。年内を目処に対応SaaSの数を100種類まで広げていきたいという

ITデバイス台帳を使えばデバイスごとの利用状況についても把握しやすい。ジョーシスで購入したデバイスであれば、購入後すぐに情報が台帳に自動反映される。

社員が退職した際には1クリックで該当するSaaSアカウントを一括削除できる。削除漏れによる“野良アカウント”は余計なコストを生み出すだけでなく、ハッキングの対象となり情報漏洩の原因にもつながりかねない。セキュリティの観点でも「野良アカウントを残さないための仕組み」が重要だという。

ジョーシスのミッションは「“職場を良くするために働く人” の可能性を解放する」こと。同サービスではSaaS、EC、BPOという3つの要素を組み合わせているが、「顧客の本質的な課題を解決するには“総力戦”で挑む必要があった」とラクスル代表取締役社長CEOの松本恭攝氏は話す。

「顧客の悩みはSaaSの管理をしたい、パソコンを買いたい、ヘルプデスクを外注したいといった(1つの機能に関する)ものではなく、業務全体を効率化することでコスト削減やセキュリティの向上を実現したいというものです。これに応えるために、総力戦で顧客の課題を解決するためのビジネスモデルを採りました」(松本氏)

 

膨大な業務量に悩む情シス担当者を「単純作業から解放」へ

今回ラクスルがジョーシスを開発した背景には、新型コロナウイルス感染症が大きく関わっているという。

多くの企業と同様にラクスルもコロナによって事業面で大きな打撃を受け、リモートワークへの移行と並行してコストカットにも取り組んできた。

特に変動費に当たる部分のコストを見直し、販促管理費に関しては約50%を削減。マーケティング費用や開発業務委託費用において大幅なコストカットを進める中で、他と比べてほとんど減らせなかったのが「コーポレートITの業務委託費」だったという。

調べてみると、その原因は「フィジカルな業務が多い」ことにあった。上述したようにPCのセットアップやデバイスの故障対応などは現場にいかなければ対応できない。自動化が進んでいなかったが故に、外部に委託せざるをえない状態になっていた。