ゲームで死亡した参加者たちは、火葬場で炎に焼かれていく。日本のような火葬が当たり前の国では普通に見えるかもしれないが、キリスト教徒が多い地域では今でも土葬がが多い(編集注:韓国は儒教の影響からも土葬を重んじていたが、近年は火葬が主流になりつつある)。なぜならキリスト教の死生観においては人は死後、復活して天国に行けると考えられており、受け皿となる肉体を燃やすことはタブーとされてきたからだ。

キリスト教において地獄は "永遠の火"とも表現される。参加者たちが延々と燃やされ続けるイカゲームの会場は、まさに地獄そのものだと言える。

最初のゲーム「だるまさんが転んだ」のワンシーン
最初のゲーム「だるまさんが転んだ」のワンシーン

"数字" や食事が示す、重要な意味

イカゲームで目を引くのは、何と言ってもジャージに書かれた数字だろう。キリスト教において "1" は唯一神をあらわす特別な数字だ。ジャージの番号が "001" であることは、それがイカゲームにおける絶対的な存在であることを示しているのではないか。

ゲームの現場と並行して、黒幕がゲームの公平性というものを重要視していることも描かれている本作だが、そんな公平性を主人公のギフンらが自ら破るのが第4のゲームだ。

このゲームは、各自手持ちのビー玉10個を賭けてペアと対戦し、相手のビー玉を全て取った方が勝利となる。あることをきっかけにギフンは、このときだけ“001" のジャージを身に着けている。そしてペアとなったおじいさんから「カンブ(韓国でビー玉やメンコなどを使った遊びをするとき、お互いのビー玉やメンコなどを共有できる友だちを指す言葉)になろう」という誘いを受けたからこそ、ギフンは相手のビー玉を全て取り、結果的に生き残ることができた。その後の展開で「どの番号を選ぶかが重要だ」という会話が出ることからも、数字を意図的にちりばめていることが想像できる。

また本作の中で最も過酷と言っていい第5のゲーム「飛び石渡り」。勝ち残ることになるのはわずか3人だ。"3" は三賢人・三位一体・三大祭など、キリスト教にとって非常に重要な数字であり、最後の戦いを前に生き残る人間は3人でなければいけなかったのだ。

 

第5ゲームを勝ち残った参加者たちはディナーに招待されるが、そのメインディッシュのラム肉は "神の子羊" で、ワインは "キリストの血" とも言える。まさに "最後の晩餐"だ。そのディナーの翌朝には、ギフンはキリストさながらの傷を負い、さらにはイカゲームという地獄から "復活" するまでが描かれる。変わってしまった風貌も、イエス・キリストのような姿だ。