やはりVCがどのような仕事をやっているのか外から見えにくいのは、投資先のスタートアップでのできごとやどのようなやりとりが行われているのかが、なかなかオープンにならない、できるようなものではないからだと思います。そこには、起業家とVCの当人たちにしかわからない事情や関係があります。また、VCの具体的な業務という点でも、資金を提供して終わりではありません。5~7年スパンで起業家に伴走して、信頼関係をベースに、イグジット(IPOやM&A)するまで支援します。かなり人と人とのウェットな関係も大事になってきます。

スタートアップの中で、実際どんなような支援がされているか、どんなやり取りがあるのかが見えづらい側面も多いため“ブラックボックス化”しているように感じるのかもしれませんね。

そういう意味では、VCは投資業のなかで圧倒的に「投資」から遠い仕事をしていると言えます。

上場株に投資する投資信託などは、「すでにあるもの」のなかから対象を選び、投資をしています。ところがVCは、場合によっては「まだなにもないもの」に対して投資することがあります。また、ハンズオンで支援するという意味では、その会社がどれくらい成長するかに自分自身(の支援内容)が一定の割合で関わってきます。起業家と一緒に、事業を大きくするところを支援して、伴走していくという意味で、よく「entrepreneur behind the entrepreneurs(起業家たちの後ろの起業家)」と言われます。

独立系VCなどで課される「1%コミット」とは

──あらためて、VCのビジネスがどのように成立しているのか教えて下さい。

基本的には、管理報酬と成功報酬の2つです。管理報酬とは、外部投資家(LP:Linited Partner)の資金を預かり、運用するための手数料のことです。

管理報酬はVCがファンドを運用するために必要な日々のオペレーションの費用をカバーするのに必要十分なものというのが、趣旨です。後述する成功報酬が、LPとVCのファンド運用者(GP)リターンを大きくするという点において、インセンティブを1つにする役割を担うのに対し、管理報酬はリターンの多寡によらず、ファンドが設立した時点で、ファンド規模によって決まっています。

VCの報酬に占める管理報酬の割合が大きくなりすぎると、LPとインセンティブがズレかねません。なので、ファンド設立時には、LPからは「管理報酬が適切か」という議論がよく起こります。ただしファンド規模が小さい場合、管理報酬が少なすぎると必要な費用をカバーできなくなってしまいます。結果としてファンド規模が小さい場合は管理報酬のパーセンテージは上がりやすく、逆にファンド規模が大きければ上がりにくいです。