そうなんです。むしろ金銭的なコミットとリスクだけをとりあげると、起業家が創業時に個人で拠出する資本金より大きいかもしれません。投資家の期待、あるいは他のVCに比べて、小さなリターンしかファンドが出せないと、次のファンドが集まらないので、”倒産”みたいなこともありえます。という意味では、本当に「VC事業をやっているスタートアップ」とう側面は強いと思います。とはいえ、管理報酬がありファンド期間中は売上が保証されているという意味では、「ミディアム・リスク」なのかもしれません。その代わり、成功報酬があるとは言え、アップサイド(大成功した際に得られる報酬)は起業家程ではないので「ミディアム・リターン」だと思います。

──とは言え、VCは報酬も高いのでは。

もちろん悲壮感のある話をしても仕方ありません。アップサイドは成功報酬で一般企業のサラリーマンよりはあります。一方でほかの投資事業、ヘッジファンドやバイアウトファンドに比べると少ないくらいでしょうか。

しかも、完全にその成功報酬は、自分の結果次第です。多くのVCでは自分がファンド全体のリターンにどれだけ貢献したのか、ファンドの運営にどれだけ貢献したのかで決まります。リターンがなければ、成功報酬もゼロになるわけです。その点、キャピタリスト個人は、プロ野球選手と同じく、成果がなければ来シーズンで契約してもらえないといったこともあります。ファンド全体で見ても、次のファンドが集まらないということもあります。

LPから求められるファンドのリターンはおおよそグロスで2.5倍ほどです。ですがこれはファンド全体としての数字で、パートナー(GP)だけではなく、その下にいるジュニアメンバーも含めた全体でその数字を出さないといけません。

つまり、パートナーは、VC会社の経営者として経営雑務をこなしながら、プレイングマネージャーとして現場のキャピタリストとしてホームランも求められることになります。

そういった意味では、ファンドごとの短期的なリターンと、ファーム(会社)としての長期的な継続性をバランスしなければいけません。VCは職人的な側面が大きく、属人性が高い部分があります。職人的に、「親方の技を何も教えず、背中から勝手に盗め」というかたちだと、あまりにも経営として組織戦略がおろそかになってしまっています。なので、パートナーとジュニアで常にペアを組んで案件にあたる、ペアの組み方もたすき掛けで全パートナーとジュニアが組む、ジュニアの案件にもパートナーがサブで入るなど、VCという仕事の職人的な側面を受け入れた上で、組織としてどうジュニアの成功を加速できるかというのはすごく考えています(後編に続く)。