そう語るのは、初期からサービス開発を担当する後藤正徳氏だ。リリースから16年経つGoogle マップのスタート地点から、現在までの変遷を聞いた。

Google マップのサービス開発を担当する後藤正徳氏 
Google マップのサービス開発を担当する後藤正徳氏

16年前、「北米とイギリスのみ」からスタートしたGoogle マップ

Google マップがリリースされたのは2005年2月。その5カ月後の7月から、日本版の提供がスタートした。2006年にはGoogle Earthの日本語版、2008年にはストリートビューなど、今やおなじみの機能が次々と実装されて登場。そして2011年の東日本大震災では、被災地の衛星写真や自動車通行実績情報マップも提供した。

では、リリース初期のGoogle マップはどのような姿だったのだろうか。当時のサービス画像を見てみると、映し出された地図に載っていたのは北米とイギリスのみ。

2005年2月にリリースされたときのGoogle マップ
2005年2月にリリースされたときのGoogle マップ

「改めて見てみると、今とは違うデザインですよね(笑)。ただ、当時からGoogleが持ちうる、さまざまな技術を投入していました。例えば、地図上をドラッグしてぐりぐりと動かせたり、クリックしてズームできたり。そういったことができる地図サービスは、他にありませんでした」(後藤氏)

当初のGoogle マップは紙からデジタルへ。地図を再定義することを目的にしていた。最初の壁となったのは「地図と検索機能をどう組み合わせるか」だった。というのも、このときはまだ「地図で目的地を確認する」以外に、どういったニーズがあるのかが誰にもわからなかったのだ。

そのため、住所や職探しなどの検索ボックスを並べてみるなど、試行錯誤を繰り返した。そのなかで、世の中に広まるきっかけとなったのが「API(Application Programming Interface、ソフトウェアの一部を外部に公開すること)開放」だ。

「リリースして少し経ったころ、Google マップに触れたユーザーが『自分のサイトに埋め込めるんじゃないか?』と思い、サイト上にGoogle マップを埋め込み始めたんです。これをサポートするかたちでGoogle マップのAPIを開放したところ、瞬く間にサービスの利用度が上がりました」(後藤氏)

日本ならではの“複雑性”がGoogle マップの精度を上げた

時代とともに、Google マップに求められるニーズも使われ方も変化する。リリース時はパソコンが主流だったが、今ではモバイルで使用されていることも多い。最近ではGoogle アシスタントに「OK, Google」と目的地を呼びかければ、現在地からの最適な経路を導き出せるようになった。

2008年時点でのGoogle マップのモバイル版
2008年時点でのGoogle マップのモバイル版

「Google マップの登場で、地図も検索を構成する情報の1つになりました。多くのユーザーが検索する情報の2割程度が、なんらかの場所を含んだ情報になっているとも言われます」(後藤氏)