より良質な情報にするため、ユーザーによるレビューも募集。現在1億人のユーザーが参加し、スポット毎の情報や写真を提供している。これによって純粋な位置情報だけでなく「そこへ行けば何があるのか」がより明確になった。

しかし、レビューに「フェイク情報」はつきものだ。情報の精査はどのように行っているのだろうか。

「問題があればユーザーに報告していただくと同時に、AIでもレビュー情報を精査しています。これは、どちらか片方だけでは成立しないんですよね。特にコロナ禍にある今では、間違った情報で案内されることがこれまでよりも深刻になりました。そのため、ユーザーからもフィードバックをもらいつつ、自分たちが持ちうる技術で一緒に情報の精度を上げようとしているところです」(後藤氏)

触れておきたいのは、前述もした「日本ならではの開発ポイントがGoogle マップを発展させたこと」についてだ。

後藤氏によると、海外に比べて日本は「サービスへの期待値が高い」ことに加えて、「日本の街の構造は独特」「世界唯一の住所形態」の2つの特徴があるという。

「日本の各主要都市には鉄道だけでなく地下鉄があり、地下街もあります。さらに、巨大なビルには数百以上のビジネスがひしめきあっています。例えば東京・渋谷は、国道246号線という道路があり、その横には歩道橋がいくつも走っている。さらにその下には地下鉄があり……複雑な都市構造になっています」

「なかでも特徴的なのが住所です。『東京都港区六本木○丁目○番○号』と、大きなところから細かな場所へと落ちていくスタイルは、世界唯一と言っていい。他の国だと、道路と番号で、場所がわかる。道路の名前がわかると目的地へたどり着けますが、日本は番地まで区切られています。世界のシステムは通用しないという意味で、日本は“地図の課題先進国”でした」(後藤氏)

もともとアメリカやイギリスのガイドブックには写真や文字が少ない。一方、日本の地図には写真や文字だけでなく、飲食店の場所なども細かく示されている。Google マップで「日本の複雑さ」を描いたところ、今まで他国にはなかった地図への認識も塗り替えることになったのだ。

「便利なだけじゃダメだから」Google マップが望む進化の形

「でも、便利なだけじゃダメなんですよね」と後藤氏。2012年のエイプリルフールにはGoogle マップがファミコン版ドラゴンクエスト風になったほか、2014年にはGoogleマップ内に生息する「やせいのポケモン」をゲットする「ポケモンチャレンジカップ」を開催。これはのちにNianticの「ポケモンGO」につながる試みだ。このように単なる地図サービスとは言えない遊び心も盛り込んできた。