「エイプリルフールだけでなく、Google Earthで世界にある28館の美術館内を歩けたり、タイムラプスで10年前の街の様子を見られたり、楽しく使ってもらうための機能も揃えています。特にタイムラプスは、熱帯雨林が街へ変化する様子を見られるので『世界はどんどん変わっている』と実感できます」(後藤氏)

当初は「紙からデジタルへ」を目的に誕生したGoogle マップ。今では目的地までの経路を探すだけでなく、飲食店や混雑状況など、街に関する細かな情報も調べられるようになった。街が変化するに連れて、Google マップの存在や役割はどのように変化したのだろうか?

「変化にあわせて、Google マップの情報も更新しなければなりません。そのスピードは、新型コロナウイルスの影響によって上がったように感じています。コロナ禍で誤情報があってはいけません。感染症対策をしていているのか、そもそもお店は開いているのか。リアルタイム性が求められる時代なので、情報の信頼性と更新の速さとの両立は大事ですね」

「近年では、多様性も重視される時代になりました。Google マップでも、アクセシビリティ(年齢や身体的条件に関わらず、サービスを活用できる状態)の1つとして、音声案内機能の開発にも取り組んでいます。目が見えない方が困らないように、定期的に『目的地まであと何メートルです』『◯メートル先で右に曲がってください』とアナウンスするというものです。このように、Google マップにはまだまだできることがたくさんあるんですよね」(後藤氏)

例えば、2021年7月に東京駅や渋谷駅などJR東日本の主要駅で屋内ARナビ「インドアライブビュー」の提供を開始するなど、まだまだサービス自体が進化している。この機能はストリートビューの「屋内版」で、“ダンジョン”とも称される渋谷駅構内でカメラをかざすと、目的地までナビゲーションしてくれる。

「屋外に比べて、屋内は似たような風景が多く、リアルタイムで認識するのが難しかったんです。我々のソフトウェアはもちろん、ハードウェアの進化が相まって、ようやくリリースできました」(後藤氏)

新しい建物ができたり、駅構内の形が変わったり。街が変化すれば、それに合わせてGoogle マップも進化しなければならない。取材の最後、後藤氏は「だからこそ、Google マップの取り組みに終わりはないんです」と語った。