そして3つめが、今回FUNDINNO MARKETによって解決しようとしている「未上場株の流動性が乏しい」という課題だ。
投資した資金が何らかのかたちで投資家のもとへ返ってくる仕組みがなければ、リスクマネーは循環していかない。そのためには「エグジットの手段をいかに作っていくかがポイント」であり、「エグジットの手段が多様化することで投資家のさまざまな換金ニーズに応えられる」と柴原氏は話す。
IPOやM&Aに比べるとセカンダリーマーケットにおけるリターンの期待値は小さくなるが、保有期間を短縮し、換金までの時間を早められるというメリットがある。
「(事業を通じて)何かを成し遂げたいと思った時、お金がないと事業はなかなか進みません。そこで重要になるのが投資家の協力です。その点はFUNDINNOで少しずつ実現できつつあるという思いがある反面、エクイティファイナンスの世界は一般的に換金までに長い時間を要することを課題に感じていました」
「FUNDINNO MARKETによって一部ではあるものの流動化を実現することで、リスクマネーの循環を後押しできると考えています。循環が生まれれば、再投資という概念も生まれる。これによってリスクマネーの供給をさらに高めていきます」(柴原氏)
![日本クラウドキャピタル代表取締役CEOの柴原祐喜氏](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/b/0/-/img_b0af9387a239ea1570e2522e0b0d8c96277561.jpg)
ゆくゆくは私募での大型調達の実現も視野に
この新たなエグジット手段が浸透すれば、投資対象となる企業の幅も広がる可能性がある。
必ずしもIPOやM&Aを目指していないような企業や、IPOまでの時間軸が長くて資金調達に苦戦していた企業でも「エクイティ」という調達手段を選択できるようになるかもしれない。
今回のタイミングではセカンダリーマーケットの機能のみになっているが、将来的には企業がFUNDINNO MARKETを介して「私募による大型調達」を実施することも可能になる見込み。FUNDINNO MARKET自体も、ゆくゆくはこの2つの側面をもつサービスとして打ち出していきたいという。
「融資などで資金を集めながら経営をしてきた中小企業などにも、FUNDINNO MARKETを活用してもらえるようにしたいと考えています。自社のファンに『ファン投資家』になってもらい、その資金や支援を基に事業を成長させていく。投資家に対しては配当や株主優待など、インカムゲインに近いかたちでリターンを渡していくこともできます」(日本クラウドキャピタル執行役員の向井純太郎氏)
![FUNDINNOとFUNDINNO MARKETとの関係性と展望。FUNDINNO MARKETでは私募での大型調達にも対応していくことで、地域経済を支える中小企業や社会課題解決に取り組むソーシャルベンチャーなどの利用も見据える](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/b/b/-/img_bb3e45423ba89c91384fb10a4f43ced4188792.png)
たとえば米国ではナスダックが2015年に買収したSecondMarketを始め、近年もEquityZenやCarta(CartaX)など複数のプレーヤーが未上場株の取引サービスを手がけてきた。株式投資型クラウドファンディングを取り巻く状況なども含めて「日本は3周遅れ、4周遅れと言われることも多い」からこそ、「少しでも早く開拓していきたい」と柴原氏。