そのSIE、およびソニーグループに変化が見られるようになったのは、2020年ごろからのことだ。

近年のソニー・インタラクティブエンタテインメントの動き
近年のソニー・インタラクティブエンタテインメントの動き

2020年7月には、対戦ゲーム「Fortnite」で知られる米Epic Gamesに対し、ソニーが2.5億ドル(約283億円)を出資した。Epic Gamesは、ゲームエンジンのUnreal Engineを提供する企業でもある。

また2021年に入ってからは、SIE社内の開発組織でSIEワールドワイド・スタジオ(PlayStation Studios)の1つ、SIEジャパンスタジオが、独立スタジオのTeam Asobiに統合された。『サルゲッチュ』『ワンダと巨像』『白騎士物語』などの名作ゲームを自社組織として手がけてきた開発部隊は、事実上撤退するかたちとなっている。

それと並行するかたちでSIEは、3月に世界的な格闘ゲーム大会「EVO」(The Evolution Championship Series)をeスポーツ事業を営むRTSと共同で買収。4月にはゲームユーザーとの親和性が高いコミュニケーションサービスの「Discord」にも出資している。

さらに、フィンランドのゲーム開発会社・Housemarqueを6月に買収。続けて7月にはオランダのNixxes Software、9月に英国Firesprite、10月に米国Bluepoint Gamesを相次いで買収し、PlayStation Studiosの一員として傘下に収めた。

「SIEは日本でのファーストパーティーゲーム制作を縮小する一方で、外部のゲーム開発会社と資本関係を構築するなど、ゲームのグローバル化を見据え、ゲーム開発機能を社外・海外へ移行する方針に転換しています。また、サブセクターにも出資をすることでプラットフォーム戦略を進めていると考えられます。メディアでも報道されていますが、彼らはゲーム特化型VCのSisu Game Venturesにも投資しました。ちなみにこのSisuは、我々のファンドからも出資しているファンドです」(垣屋氏)

このような方向転換を行うコンソールプラットフォーマーが現れたことで、PlayStationのようなコンソール向けにゲームを開発してきた国内企業などは、今後どのような立ち位置をとるか検討するべきフェーズに来ていると垣屋氏はいう。また、セガ、カプコン、スクウェア・エニックス、コナミのような国内大手パブリッシャーも、自ら企画しゲームを制作することの価値について、今一度考え直す時期が来ているのではないかと述べている。