「VCマネーの流入で、小さな開発会社のエッジの利いたゲームにお金が入るようになった。ゲームを作る人たちは、(借入ではない資金で)ある意味リスクが小さな状態でゲーム制作ができるようになり、そういうプレーヤーたちとどう勝負するかを、大手も考える時期に来ています」(垣屋氏)

“手つかず”で残る日本のゲーム業界

垣屋氏によれば、実際に世界を見渡すと、欧米ではVCが入ったゲーム制作がデフォルトになりつつあり、日本だけが“手つかず”で残っているような状況になっているという。

EnFi代表取締役・Founding Partner 垣屋美智子氏
EnFi代表取締役・Founding Partner 垣屋美智子氏 写真提供:EnFi

「日本はゲームを作る文化は充実していて、素地はあります。小さい頃からゲームに慣れ親しんでいて、さまざまなジャンルのゲームプレー経験のあるゲームユーザーも多く、その人たちが成長してゲームデベロッパーになるので、カルチャーバックグラウンドが厚い。また、ソニーの開発部隊撤退などにより、優秀で経験のあるゲームデベロッパーが外へ出ている状況でもあります。そういう人たちに今、お金を入れたいというのが、(TencentやMicrosoftのような)海外ゲーム系大手であり、ゲーム特化型のVCなのです」(垣屋氏)

そうした資金の日本への流入はすでに起きている。今までの「下請けが制作してパブリッシャーが出す」という仕組みはもう崩れ始めていると垣屋氏は話す。

たとえばTencentは2020年、投資子会社を通じて日本のゲーム開発会社・マーベラスに約50億円を出資し、筆頭株主となったほか、より小さな開発会社にも幅広く投資を進めている。またTencentからは、撤退となったSIEジャパンスタジオ出身者に出資する動きもあるそうだ。

「彼らは大小問わずゲームスタジオと資本関係を結んでいます。資本を入れた後、更にスタジオを大きく成長させていく、海外でとったのと同じ手法を日本に対しても考えているのだと思います」(垣屋氏)

今後のゲームトレンドとしては、「クラウドネイティブ」をキーワードとした、「デバイス依存しない」「どこでも遊べる」「重厚感のある」ゲームが技術的にも流行するだろうと垣屋氏は言う。垣屋氏が立ち上げたファンドの投資先であるSisu Game Veunturesファンドのポートフォリオにも、そうした特徴を持つゲームの開発会社が存在する。またワールドワイドでは「アジア」「女性」も注目されているという。

「“カワイイ”系のゲームづくりは日本人が得意だとされている分野。IP(キャラクターなどの著作物)がつくれるというのも日本の特徴です。一方、中国のゲームはまだIPの観点では追いついていないところがある。ところがローカライズが完璧にされていないものでも、結構世界で遊ばれています。それは日本のゲーム会社がPCやモバイル向けのゲームをあまり開発していなくて、そうした市場へ届いていないのも理由です。それを届けるようにすれば、日本から生まれるゲームがまだまだ市場を埋められるのではないかと思います」(垣屋氏)