一方、バンダイナムコグループの場合は強いIPを持っており、その活用にプライオリティを持っているように見える。垣屋氏は、日本のゲーム会社について、「共通認識は持ちながら、それぞれ少しずつ戦略には違いがあり、危機感を持ちつつ独自の路線を探っているのではないか」と分析する。

また、モバイルゲームの領域で事業展開する各社については、垣屋氏は以下のとおり触れている。

「サイバーエージェントやグリー、DeNAなどもゲーム事業に投資してはいますが、プラットフォームがモバイルに寄っている上に、彼らにはゲーム以外の事業もあります。レガシーなゲーム会社の課題は『ゲーム会社であること』です。彼らは海外でも生き残る必要があります。海外進出しないとしても、日本には海外から他のプレーヤーが入ってきますし、また、日本の市場の規模が小さいという両方のジレンマがあるからです」

「ミクシィについては、ゲームの仕組みをほかの事業へ持って行こうという取り組みが見られます。競馬・競輪へオンラインを取り込むなど、eスポーツの文脈に近い、ITというよりはエンタメよりの方向性が感じられます。またミクシィは投資の分野でもゲームに力を入れている印象で、ゲームの世界レベルのトレンドを押さえておきたい意図があるのではないでしょうか」(垣屋氏)

 日本ではゲーム業界が“下”に見られがち

垣屋氏は日本のゲーム業界は今、ある問題を抱えているという。

垣屋氏
写真提供:EnFi

「日本のゲームはクオリティも高く、世界的に評価されています。ところが当の日本では、ゲーム業界が(ソフトウェア開発の中では)“下”に見られがちというところがすごくある。それがひとつの理由となって、ゲームで大きくなった会社がITの方向へシフトしてしまう。ゲームで成功したら、次はゲームではなく、シリコンバレーのITスタートアップとして成功したい、とかそういった方向に行ってしまいがちなんです」

「日本も10年前にガラケーゲームが台頭してきた時にモバイル特化プレーヤーが誕生しました。当時、モバイルプラットフォームを国内で席巻した後、『今度は(任天堂やPlayStationなどの)コンソールプラットフォームと戦う』みたいな方向へ行けば、日本のゲーム業界はもっと活性化したかもしれません。まだコンソールが世界的に主流で日本がその先端をいっていた10年前であった時の話です。今はそうしたフェーズが終わって、海外勢も日本に来て、新たな競争が始まっていますが、『ゲームは“下”の産業ではない』ということは今でも強く言っておきたい、広げたい考え方です」(垣屋氏)